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勝利へのカギ

【アカデミー通信】京都U-18に敗戦。このチームが克服すべき課題とは

 

U-18は20日、大分スポーツ公園だいぎんサッカー・ラグビー場Aコートで、4月の震災の影響で延期となっていた高円宮杯U-18サッカーリーグ2016プレミアリーグWEST 第3節・京都U-18戦に臨み、0-3で敗れた。

 

守備の時間が長くなった前半

 
プランはしっかり準備していた。前半は無理して攻めず無失点でしのぎ、後半、京都の足が止まる時間帯を狙ってギアを上げる作戦。中村有監督はそれを遂行するための選手起用と配置で臨み、選手たちも自分に与えられた役割を理解してピッチに立った。
 
立ち上がりはプランどおりだった。攻め込まれてもゴール前を固め、手堅く対応。ただ、プランを遂行しようとする意識が強くなりすぎたのか、攻撃の時間が作れない。最終ラインで中畑雄太がボールを持っても、高い位置で素早く陣形を整える京都にパスコースを消され、出しどころがない場面が頻繁に見られた。
 
中畑からSH、とくに左の黒木樹生への展開は何度か起点となる可能性を感じさせたが、黒木に収まっても周囲のサポートがなく、囲まれてすぐに奪われてしまう繰り返し。同様に左SHの野上拓哉がボールを持ってもすぐにパスコースを塞がれてしまい、思うように攻撃できず、守備の時間が長くなった。

プランどおり流れは引き寄せたが…

 
それでも前半はなんとかスコアレスで折り返したのだが、50分、53分と、ミスから続けざまに失点してしまう。
 
2点ビハインドにはなったが、もとより後半に勝負をかけるプラン。ギアを上げて取り返そうと、中村監督は62分、ボランチ三木慎博を下げて小野原洸を投入。野上をボランチにスライドし、黒木を右SH、小野原を左SHに配置した。間に顔を出すのが得意な野上を含めたダブルボランチと2CBでビルドアップし、SBに高い位置を取らせて、サイドを起点とした攻撃で流れを引き寄せようと試みる。
 
さらに72分には、立ち上がりから守備に頑張り疲労した靏尚基と津守翔太に代えて村井義己と森田駿を送り込む。小野原を一列上げて村井を左SHに。森田をボランチに、野上をトップ下に置いた4-2-3-1へとシステムを変更して中盤を厚くし攻撃に備えた。
 
狙いは的確で、攻撃のかたちが見えはじめる。SHの勢いある仕掛けにSBのオーバーラップも絡んだ。野上がフリーになり数的優位を作る場面も増えた。決定機も複数迎えたが、フィニッシュの精度が足りず得点には至らなかった。
 
88分、右SBの高畑奎汰に代えて白石祐晟。それまで左SBを務めた戸髙航汰を右に回し、白石を左SBに置いた。89分には黒木に代えて川端壮太も投入したが、攻めに出たところで相手のカウンターを止めることが出来ずダメ押し点を献上。残念な結果となった。

自身を生かすことは味方を助けること

 
選手たちはこの試合に向けてのプランを理解し、それぞれの長所に期待されたポジションに配置され、その長所も発揮できていたと思う。
 
ただ、せっかく長所を発揮しても、それが組織の中で生きることは少なかった。そこに今季のチームがなかなか結果を出せない要因が見え隠れしているような気がする。
 
自身に託された役割を理解し、自分の得意なプレーでそのミッションを遂行しようとすることはしても、チームメイトが長所を出そうとしたときにそれをサポートする意識が足りていない。
 
中村監督が就任以来ミーティングでも個別面談でも伝え続けてきた、献身性と自己犠牲の精神。それは山崎哲也前監督時代にも徹底されていたものであり、それこそが“大分魂”を形作ってきた。プレミアリーグで戦う他のチームに比べて、トリニータは決して高いテクニックを誇る集団ではない。それを組織力で補って結果を出し続けてきたチームだ。

周囲にイメージを伝えることも必要

 
先週開催された大津高校戦でも、3-0で勝利はしたものの、試合後のミーティングでは指導陣からの苦言が呈された。それを受けて野上は京都U-18戦後にこう反省した。
 
「前回の試合では自分らしくないプレーばかりしてしまったので、今回は自分を出しきって献身的にやろうと思って試合に入った。間に立って受けようとしたが上手くボールが出てこなかったりした。ボランチに回ってからも全体の動き出しが少なくなかなか前に行って攻撃に絡むことが出来なかった。トップ下に上がってから周囲に指示を出して修正し改善できた。結果が出なかったところは来週のセレッソ戦までに修正したい」
 
野上のようなゲームメーカータイプが中のポジションを任されたときには特に、周囲に自身のイメージを伝えることが大事になる。トップチームで活躍する坂井大将と同様、自身の魅力を生かすためには周囲との距離感がカギになるプレースタイルだけに、余計にそういうところが求められるはずだ。司令塔としての自覚をさらに強め、チームを牽引してもらいたい。

もっとチームとしてのまとまりを

 
これまでキャプテンの中畑雄太に頼りすぎていた感もあった、今季のチーム。3年生を中心に、もっとチームとしてまとまり、残り少なくなったアカデミー生活で結果を残したい。それはトリニータの歴史を守ることであると同時に、自身の実績にもなるはずだ。
 
「今日はイージーなミスから失点し、点差が開くにつれて改善することが出来なかった。自分たちボランチがもっと顔を出せば攻撃できたかもしれないが、ビビって受けず、蹴るだけになってしまった。守備の時間が長くなりサイドにボールが入ったときも前に飛び出していく体力がなく攻撃に絡めなかった」と、こちらも反省しきりの藤野誉也は「日頃の生活などまだまだ甘いところがある。そういうところがプレーに出た。自分たち3年生は(プレミアリーグで戦う権利を)預かっているので、しっかり残留して次の世代につなげていかなくてはならない」と誓いを新たにした。
 
震災の影響で延期となっていた試合をすべて消化し、これでリーグは折り返し。他チームに未消化試合が残っているためまだ暫定だが、勝ち点1差だった京都との直接対決に敗れたため、順位は下がることになる。
 
27日は第10節・C大阪U-18戦。相手は強豪だが、開幕戦ではアウェイながら好ゲームを演じた。その後の下位チームとの直接対決に良い状態で臨むためにも、泥臭く勝利をつかみ取りたい。