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試合レポート

度重なる決定機を仕留めきれず、ワンチャンスを決められて黒星

 

またも壁を破れなかった。明治安田J2第30節H徳島戦は、度重なる決定機逸を悔やむしかない無念の黒星。チャンスを築きながら決めきれない場面の連続の後に、相手にワンチャンスを仕留められた。

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徹底した撤退戦術に手を焼く

 
「ああいうちょっとした隙を相手は突いてきたし、それを仕留める力が相手にはあって僕らにはなかった」と、試合後に振り返った鈴木義宜の言葉がすべてだった。
 
徳島は18日に前節H山形戦を戦い、22日には台風12号の影響で延期となっていた第26節A岡山戦をこなしている。岡山戦後は台風の影響も懸念される中、最低限の準備をして大分へと乗り込んできた。ベンチ入りを含めた18人に加え、押谷祐樹も帯同していたところを見ると、敵将はギリギリまでいくつかのプランの選択を悩んでいたのだろう。試合後の記者会見では、大分戦の難しさについても、あわせて振り返った。
 
ディスアドバンテージを背負った徳島が選んだのは、岡山戦から5人を入れ替えての徹底した撤退戦術。前回対戦の第21節から切り替えた戦い方そのままに、5-3-2のブロックでスペースを消して大分の攻撃を阻みにきた。
 
先発させたピーター・ウタカにもっと起点を務めさせ、シュートの得意なバラルに仕留めさせようという狙いもあったのかもしれないが、鈴木を中心とした大分守備陣がよく体を張り、徳島2トップに収めさせず攻撃を成立させなかった。バラルもウタカも守備をするほうではないので大分は後方から余裕をもってボールを保持することができ、細やかに動かして徳島を押し込んでいく。
 
序盤は特に右からサイドの数的優位で崩し、7分と17分に三平和司、24分に丸谷拓也が枠内シュートを放つが、いずれも徳島守護神・梶谷裕嗣の好セーブに阻まれる。大分の選手たちが徳島のブロックの間隙を縫って攻略する様子は見応えがあったが、徳島もシシーニョらが要所を潰し、アタッキングサードではなかなか自由にさせてくれない。45分には松本怜のクロスに逆サイドから那須川将大が飛び込むが、ヘディングシュートはサイドネット。
 
一方の徳島は、移籍加入後初出場の表原玄太が起点となって何度か攻撃を試みた中から43分にウタカがシュートを放ったが、前半は枠外にそれたこの1本のみだった。
 

好機を待って耐えに耐えた徳島にやられる

 
0-0で折り返した後半は、攻撃がうまく行かずにボールをもらいに下がったりファウルをもらいにいったりしがちになっていたバラルを前に張らせ、競り勝てずにフィードを収められなかったウタカが組み立てに下りるようになった。
 
58分にはまたもエリア内で崩して三平がシュートするが、これも梶川が好セーブ。61分の前田凌佑のミドルシュートも梶川にギリギリでかき出された。
 
互いに戦術を継続し我慢比べの様相を呈してきた中で、次第に徳島の足が止まり防戦一方となっていた62分、片野坂知宏監督は2トップの2枚替えを決行。伊佐耕平と三平を藤本憲明と後藤優介に替え、前線にスピードと勢いをもたらした。早速65分、藤本の落としを後藤がシュートするが、これはサイドネット。69分には小手川宏基のクロスに後藤が頭で合わせたが、梶川のファインセーブはこれもゴールを割らせない。
 
数々の決定機を逃し続けた後に、典型的な“そういう試合”の展開が待っていた。69分にバラルを杉本太郎に代え、さらに80分にウタカを佐藤晃大にスイッチした徳島は、前線に動きを生みだすと、ここが勝負どころだと言わんばかりに、この試合でほとんど初めて主導権を握って攻めた。
 
その一回の攻撃で徳島は大分の選手の間を使ってボールを運び、杉本太郎のパスを受けた表原が小西雄大へとボールを送ると、小西は逆を取って相手を剥がしシュート。弾道は迷いなく真正面のゴールネットに突き刺さった。
 
大分は那須川を星雄次に代えて追撃するが、徳島も表原をキム・ジョンピルに代えて守備を固める。最後は鈴木が上がるパワープレーでアディショナルタイム4分まで攻めきったが、1点は遠いままだった。
 
終わってみれば、83分の1点のためにほとんどの時間帯を耐えに耐えた徳島が試合巧者と呼ばれる展開。決定機を逃した攻撃陣は反省と悔しさを噛み締めた表情を隠しきれなかった。
 
打てる策は打った中で、ミドルシュートを相手に当てたりクロスへの飛び込みがなかったりとフィニッシュの精度の問題はいまだ解消されていない。チームは次節・福岡戦に向けて気持ちを切り替え、課題克服に向けトレーニングを続ける。