開幕戦以来のホーム白星で今季初の連勝。内容的にも大きな収穫を得たダービー

前節・磐田戦から中3日、今節はホームでやはりJ1からの降格組・鳥栖との九州ダービー。両軍のサポーターがスタジアムの雰囲気を盛り上げる中、早い時間にリードを奪い落ち着いて試合を運んだ大分が、開幕戦以来のホーム白星で今季初の連勝を遂げた。
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攻守で相手を上回るミラーゲームに
スコアは1-0だったが、先制後の試合運びにも落ち着きが感じられ、完勝と言える試合になった。
ここ最近は3-5-2を基本布陣に5-3-2のブロックを構える守備から入り、リードしたり相手のサイド攻撃に対応したりする際に5-4-1に変形して中盤のスペースを消すようにしていたのだが、今節は立ち上がりから3-4-2-1。鳥栖と同じシステムでがっつりとミラーゲームを仕掛け、前線からアグレッシブに相手のビルドアップを阻みに行った。
鳥栖のほうも試合開始直後は激しくハイプレスをかけ、大分の最終ラインがちょっとバタつくシーンもあったのだが、その後、攻撃時に天笠泰輝が落ちて立ち位置をずらしてビルドアップするようになると、特に野村直輝がタイミングよく間に顔を出して数的優位を作ることで、鳥栖は守備をハメきれなくなった。
6分、その形からデルランのクサビを受けた野村がスルーパスを通し、有馬幸太郎がシュート。相手にブロックされたこぼれ球を今度は𠮷田真那斗がシュートして、これは泉森涼太にキャッチされた。12分にはデルランのロングフィードに抜け出した宇津元伸弥がシュートを放つが、またも泉森。

ノム2戦連続・序盤の先制弾で流れを引き寄せる
だが、13分には大分の先制点が生まれた。相手のロングフィードをペレイラが大きく蹴り返したボールを、小川大空が処理しようとしたところへ伊佐耕平が猛然とプレッシャーをかける。小川がもたつく間に走り込んできた有馬がボールを収め、すかさず中央の野村に送ると、野村はドリブルで相手DF2枚を剥がして泉森の脇を抜く右足シュートでゴールネットを揺らした。
野村は2戦連続弾。前節の磐田戦に続き早い時間にリードを奪うと、その後も大分の攻勢が続く。17分には榊原彗悟が最終ラインから組み立て、野村に遊びのパスを差したあとデルランに展開すると、デルランのスルーパスを伊佐が落として宇津元がクロス。19分には相手のビルドアップをハイプレスで追い詰め、天笠が奪ってショートカウンターから𠮷田が折り返し。いずれもシュートには至らなかったが、ビルドアップとショートカウンターで立て続けにチャンスを築いた。
鳥栖は10分に右CKから松本凪生が狙って右に逸れた以外、チャンスを作れない。27分には鈴木大馳へとロングフィードを送るが、ペレイラと野嶽惇也にサンドされて収めきれず。32分には伊佐の折り返しへの対応があわやオウンゴールというピンチもあったが泉森が押さえた。39分にようやく新井晴樹が左サイドを突破してシュートを放って濵田太郎にキャッチされ、それが前半唯一の鳥栖のシュートとなった。40分、ヴィキンタス・スリヴカが落ちてボールを受けシュートを試みるがこれも濵田。

落ち着いた試合運びで鳥栖の反撃に対応
前半途中からミドルブロックを構える守備に切り替えた大分にボールを持たされる展開になった鳥栖。ハーフタイムに3枚替えで状況打開を期して後半をスタートした。右WBの上原牧人を松田詠太郎に、ボランチの松本を櫻井辰徳に、1トップの鈴木を新川志音に。これで前線からのハイプレスを復活させ、ミラーゲームの相手にしっかり守備をハメに行く姿勢を取る。
だが、落ち着いて構えるところからカウンターを狙う大分には安定感があった。これまでは1点のリードでは追いつかれそうな空気も漂っていたのだが、この試合では度重なる相手のセットプレーも集中して跳ね返し、濵田も落ち着いて対応しながら危なげない守備を続けた。
56分には宇津元の左CKを泉森がキャッチしたところから鳥栖のロングカウンターが発動し、独走した新川から新井に展開。エリア内に進入した新井のクロスに松田が反応したが左足で上手くミートできず、こぼれたところに新川が足を出すが、ボールは野村に掻き出されて、鳥栖はこの試合最大のチャンスも仕留めきれない。

両守護神の安定感もあり1-0のまま終了
カウンターで追加点を狙う大分も、61分にビッグチャンス。スリヴカのクロスをペレイラが掻き出し、それを有馬が収めて𠮷田がサイドを持ち上がる。有馬と伊佐が駆け上がる中、𠮷田が有馬を選択すると、有馬は必死で寄せてくる相手を巧みにかわして強引に右足を振り抜いたが、わずかに枠の左に逸れた。
64分には鳥栖が西矢健人を堀米勇輝にチェンジ。さらに74分にはスリヴカを日野翔太に代え、大分も同じタイミングで野村を池田廉、伊佐を屋敷優成に交代する。互いにセットプレーでチャンスを築くが、濵田と泉森の両守護神も譲らず、スコアが動かないまま時計は進む。
大分は89分、宇津元を香川勇気、有馬を小酒井新大に交代して4分のアディショナルタイムに突入。さらに90+1分、𠮷田を戸根一誓に代えて野嶽を右WBに出し、戸根、ペレイラ、デルランで中央の守備の強度を高めて、最後まで集中を切らさず鳥栖の追撃を退けた。

攻撃の選択肢増で今後への期待が高まる
ウノゼロの完勝という印象で、開幕の札幌戦以来の白星。前節の磐田戦から今季初の連勝を遂げ、混戦の中、順位は6位へと浮上した。
結果はもちろんだが、この試合では内容面での収穫も大きかった。開幕から4試合続けた3-4-2-1では攻撃面が整理できておらずブロックを構えると1トップが孤立して攻撃がなかなか成立しない状態に。1トップの孤立を解消するために第5節から採用した3-5-2では、トリプルボランチから榊原の守備を起点とするカウンターでチャンスを量産できるようになったものの、攻撃がほとんどそれ一色となり、カウンターばかりでは運動量や再現性の点で、今後の手詰まりが懸念されていた。
再び3-4-2-1に戻した今節は、野村がよりゴールに近いポジションでプレーできるようになったことで、彼本来のストロングポイントを攻撃面で多く発揮できるようになった。ダブルボランチの一角での榊原のボール奪取とそこからの推進力はそのままに、天笠とともに後方からのビルドアップにも関わりながら、攻撃の選択肢を増やすことが出来ていた。シーズン序盤には野村や清武弘嗣のポテンシャルをウィークポイントのカバーに消費していた印象が強かったが、今節のような戦い方が出来るようになれば、彼らのテクニックや経験値が今後はさらに生きてくるはずだ。
次節は中3日で個性的な熊本を迎えての、またも九州ダービー。3連勝を目指して、チームはすでに準備に取り掛かっている。
