前半の劣勢とビハインドを覆す構造改革も逆転にまでは届かず、連戦ラストは勝点1

大分の先制を許すまじと勢いを出してきた富山に対し、受けに回ってしまった前半。ビハインドの難しい展開をシステム変更で一気に形成逆転へと持ち込んだが、その流れを逆転にまで繋げることは出来なかった。
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ベースで富山に上回られ続けた立ち上がり
厳しい立ち上がりになった。試合後に富山のキャプテン・吉平翼が明かしたところによると、やはり大分は立ち上がりに激しくプレスをかけて先制し守り切るチームなので、まずは大分の勢いを上回ろうと示し合わせて試合に入ったという。その約束どおり、富山は球際や切り替えで大分より優位に立ち、ことごとくセカンドボールを拾っては大分を押し込んで攻勢に出た。
ボールを繋いで前進しようとする大分だが、ボールが入ったところにタックルされてロストしたり、緩くなったパスをインターセプトされたりして、なかなか攻撃の形を作れない。6分には自陣での競り合いから武颯の落としを吉平にシュートされ、枠の上に逸れる。7分にもセカンドボールを松岡大智にシュートされ、これは濵田太郎がキャッチ。
こちらも古巣戦の松田力がガイミングよく動いて数的優位を作る富山は、序盤を支配して試合を進めた。15分には宇津元伸弥が倒されて得た左サイドからのFKを宇津元自身が蹴り、こぼれ球を天笠泰輝が狙うが枠の上。17分にはボールを収めた野嶽惇也に吉平が猛然とプレスをかけて奪い、クロスを入れるとエリア内で松岡が収めてシュート。咄嗟に飛び出した濵田が体を張ってCKに逃れたが、その右CKをショートでワンクッション入れた松岡のクロスに酒井崇一が飛び込んで、わずかに枠の左に逸れたものの、あわや失点のピンチという場面もあった。

先制を許して難しい展開に
22分には天笠のサイドチェンジを受けたデルランのクロスを再び右サイドで収めた有馬幸太郎がシュートする場面も作ったが、相手にブロックされる。
23分、連動してプレスをかける中で生まれたスペースを使われるかたちで植田啓太、吉平とワンタッチで繋がれ、最後はドリブルで中央へと切れ込んだ松岡がミドルシュート。寄せも間に合わず豪快に放たれた弾道は濵田の反応する余地もなくゴールネットを揺らした。
先制した富山はそこからブロックを組んで守備を固める。大分は攻撃のミスから攻め返されるなど、どうしてもペースを掴めない。38分には𠮷田真那斗のインターセプトから伊佐耕平がエリア内で収めマイナスのクロス。相手にブロックされたがそのパスを伊佐が奪ってもう一度マイナスに送り、野村直輝がシュートしたが、これも相手に跳ね返された。

一気に流れを反転させたシステム変更
片野坂知宏監督はハーフタイムを境に3-5-2へとシステム変更して構造改革。野村をアンカーに置いてゲームを組み立て、天笠と榊原彗悟をインサイドハーフに。前線では有馬が高い位置に張り、2トップを組んだ伊佐が組み立てに下りて起点を作った。
この変更により、大分が相手の間でボールを収め前進できるようになって、形勢は逆転。48分には伊佐が収めて有馬が展開したところから榊原がクロスを送り、こぼれ球に伊佐が右足を振り抜いたが、勢い満点のシュートはゴール前にいた𠮷田を直撃してしまった。50分には相手のゴールキックを𠮷田がヘディングで大きく前に送り返し、相手と入れ替わった有馬が攻め上がってクロス。天笠が納め損なったところを宇津元が繋いで榊原にシュートチャンスが訪れたが、相手の寄せも早く、タイミングを失って打つことが出来ない。
相手を押し込み続ける時間帯。58分には右サイドから攻めると見せかけて𠮷田が中へ送り天笠がはたいて榊原がシュート。非常に巧みな崩しだったが、相手にブロックされた。

アリの同点弾後も攻め続けたが…
大分ペースで進んでいた60分、ついに同点弾を仕留めた。その直前には3連続でクロスを平尾駿輝にパンチングで掻き出され、そのアグレッシブな守備に阻まれていたが、末木裕也の横パスを受けた布施谷翔に榊原が勢いよくプレスをかけたところで、ビッグチャンスが生まれる。布施谷の神山京右へのバックパスをゴール正面でカットした有馬が神山をかわして左足シュート。平尾も手を伸ばしたが、ボールはゴールへと吸い込まれた。
さらに勢いづく大分は64分、榊原のクサビを有馬が反転シュートして枠の左。小田切道治監督は流れを取り戻そうと、武と松田を碓井聖生と井上直輝にチェンジし、2トップの強度を高める。それでも大分は攻め続け、65分には宇津元が単騎突破で相手を剥がしながらエリア内へ進入するが富山の牙城に阻まれた。66分には野村の展開から宇津元が天笠へ送り、最後は榊原が狙ってディフレクション。それで得た宇津元の左CKの流れから野村が放ったシュートは相手にブロックされる。

逆転できず、突き放されもせず
前半とは一転、ずっと優位に立つ大分は、ここで追加点を狙おうと69分、宇津元を薩川淳貴に交代。71分には松岡のFKの流れからエリア内で井上に収められそうになるが、濵田が対応し井上も足を滑らせて難を逃れた。
73分には富山のビルドアップのミスを突いて𠮷田がボールを奪って反転攻勢へ。榊原のクロスは逆に流れたが、薩川のクロスを一瞬フリーになっていた伊佐がヘディングシュート。だが、弾道は平尾に掻き出されてしまった。73分にはデルランの背後でロングボールを収めた井上に運ばれてシュートを許すが枠の上へ。
75分、富山は吉平と松岡の両SHをベンチに下げ、深澤壯太と髙橋馨希を送り込むと、布施谷を左SHに上げ深澤を左SBに配置した。76分には大分が、天笠を小酒井新大、伊佐を鮎川峻に2枚替えする。ここからは富山も徐々に盛り返し、激しい攻防が続くことに。85分には大分が𠮷田を茂、野村を中川寛斗に交代し、同時に富山も布施谷を浦十蔵にチェンジする。最終盤は大分が再びやや受ける流れになりながら、試合は1-1のままタイムアップ。
大分にとっては一気に逆転まで持っていきたかった試合。富山としても先制の勢いを維持したかったはずだ。痛み分けながら、ともに連敗は回避。こうして収穫と課題の両面をもたらした変則的な連戦が終わった。
