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試合レポート

「攻撃に繋げる守備」で立ち向かうも一瞬の隙で破られた均衡。昨季の雪辱ならず

 

個々に強烈な戦力を擁する長崎とのミラーゲーム。勝機を見出すために要所を押さえて真っ向勝負に挑み、手応えもあったのだが、一瞬の隙で敗れることとなった。

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それまで抑えていたのに、悔やまれる一瞬の隙

まるで「ロストフの14秒」。2018ロシアW杯決勝トーナメント1回戦・ベルギー戦を思い起こした人も多かったのではないか。本田圭佑のCKをキャッチしたクルトワがボールを出し、デ・ブライネが持ち上がってムニエのグラウンダークロスをルカクの背後でシャドリに沈められた。後半アディショナルタイムのこの失点で、日本のロシアでの戦いは幕を下ろしている。
 
74分、天笠泰輝の右CKにデルランが頭で合わせて浮いたボールをキャッチした後藤雅明は、勢いよく前方へとボールを投げた。抜け出したのはマテウス・ジェズス。その攻め上がりを遅らせようと野嶽惇也もついていたが左を駆け上がってきた笠柳翼へと展開され、シュートコースには宇津元伸弥が入る。シュートはムン・キョンゴンが左手で防いだのだがクリアが甘く、掻き出そうとした野嶽よりも早く走り込んできた米田隼也に押し込まれてしまった。後藤が投げるときに誰かが寄せていれば、あるいはマテウスに渡る前に誰かがカットできていれば。チームで共有しているはずのカウンターブロックの約束事が、この場面ではすっかり抜け落ちていた。
 
その少し前の時間帯から攻め込む時間やチャンスを増やしていたことが、逆に守備意識の緩みを呼んでしまったのか。前半はほぼ完璧な守備からリズムを作り、後半は修正した相手に決定機を作られながらも最後のところで体を張って失点は防げていただけに、本当に悔やまれる。

 

要点を絞って挑んだ真っ向勝負

前々節から高木琢也監督体制へと切り替えた長崎は、下平隆宏前監督のときよりもシンプルにタレントの個のパワーを生かす戦い方へとシフトしている。フアンマ・デルガドとマテウス・ジェズス、澤田崇が並ぶ1トップ2シャドーにボールが入ってしまうと、そこから彼らを防ぐのは困難だ。一方で下平前監督がやっていたような複雑な動きは少なくなっているため、ミラーゲームならなおさら守備はハメやすい。が、その局面のバトルで上回られればたちまちピンチに陥る危険性とも背中合わせと言える。
 
それも織り込み済みで、チームは今節、要点を絞ってこのミラーゲームでの真っ向勝負に挑んだ。陣形を極力コンパクトに維持し、前線から守備をしながら相手の縦パスを阻みフィードの精度を削って、いい形で長崎の前線にボールを入れさせないようにする。特にダブルボランチの左で長崎の左サイドで攻撃を組み立てる松本天夢をケア。また、左サイドから強力な突破で好機を演出する増山朝陽は、マッチアップする茂平がガッチリと対応した。それでもフアンマやマテウスにボールが収まりそうになれば3バックがそれを許さず。特にデルランのフアンマへの対応は力強かった。
 
そういうデュエルの多いゲームになったため、ピーススタジアムの熱気もひときわだった。長崎の個を抑えようと守備意識を高めて臨んだ大分も、ただ耐えるだけの守備ではなく、奪った瞬間に前への勢いを出す攻撃に繋がる守備で、積極的にゴールを目指していく。

 

前半の大分ペースを覆すべく長崎も修正

10分には中川寛斗のパスを受けた天笠泰輝のミドルシュートが枠の右。11分にはフアンマからマテウス、そして再びフアンマへの流れが最後で合わず。23分には増山の左CKのこぼれ球から狙ってマテウスがふかす。30分には天笠から茂と繋ぐが有馬幸太郎はシュートに至らない。44分には宇津元のショート右CKから茂が繋ぎ中川のクロスをデルランが頭で合わせて枠の左へ。
 
激しいデュエルとトランジションが繰り返される中で互いに好機を築きながら、前半は0-0のまま、大分が長崎を封じたイメージで終了。片野坂知宏監督はハーフタイムに、長崎の左シャドーの澤田のポジショニングについて選手たちにアラートの必要性を伝えた。高木監督は後半あたまから、ケアされていまひとつ仕事の出来ていなかった松本を安部大晴にチェンジ。安部がアンカー気味に落ち、山口蛍が前に出てくる形を取りながら、大分の中盤の守備を逆手に取ってスペースを使おうと企図した。
 
49分にはドリブルする増山を倒して与えたFKをフアンマに折り返され新井一耀にヘディングシュートされるが枠の上。52分には伊佐耕平のカウンターが発動したが、有馬を経由しての宇津元のクロスは鮎川峻がオフサイドとなった。

 

攻撃力を高めた野村の投入

59分、片野坂監督は鮎川に代えて第18節・甲府戦以来の出場となる野村直輝を投入。63分には高木監督がフアンマをエジガル・ジュニオに、澤田を笠柳に2枚替えすると、マテウスが1トップに移りエジガルが右シャドーの位置を取った。
 
62分の増山のクロスもムン・キョンゴンが掻き出し、そのこぼれ球から米田に合わせられたがこれもムンがキャッチしてピンチを未然に防ぐ。そして65分、この試合での大分の最大のチャンス。右サイドハーフウェイライン付近でボールを収めた有馬が、追い越していく茂にボールを託すと、茂はドリブルで江川湧清を剥がしながら持ち上がって逆サイドで完全にフリーになっていた野村へとパス。野村の鋭いシュートは枠を捉えたが、横っ跳びした後藤のファインセーブに掻き出されて得点にはならなかった。
 
野村が入って攻撃が活性化した状況も見極めながら、67分、片野坂監督は伊佐を小酒井新大、中川を野嶽に交代。有馬が1トップ、小酒井が右シャドーの形とした。68分には有馬が抜け出してクロスを送りブロックされ、69分には宇津元の左CKがディフレクションで枠上へ。高さと強さのある長崎への対策か、この試合で宇津元は左CKの際に、ゴールの枠ギリギリの後藤のあたりを狙っていたようだった。事故が起きればゴールマウスに吸い込まれるし、天皇杯2回戦・札幌戦の同点弾のイメージもあったかもしれない。

 

ムンの活躍で最後まで望みは繋いだが…

71分にはセカンドボールを収めた野村がドリブルからシュートして枠の左。72分にも有馬が持ち上がってカウンターを仕掛けるが横パスをカットされた。その後も分厚い攻撃で押し込む大分。攻め込む時間や回数を増やし、大分の流れに傾いていた、その時間帯、そのCKからの被カウンター、そして失点だった。
 
均衡が崩れ、リードしたことで長崎は試合の流れを手繰り寄せる手がかりを掴む。77分、増山に代えて高畑奎汰。高畑のクロスは茂がブロック。80分にはムンのクリアボールを山口に繋がれ江川にボレーシュートを許すが、これはムンがキャッチした。
 
1点を追う大分は81分、宇津元を薩川淳貴、茂を松尾勇佑に代えて攻撃の色を強めるが、長崎もリードした余裕を見せ、無理せずに意識を守備へと寄せる。球際の攻防は最終盤まで続き、大分は攻めながらもなかなかシュートを打たせてもらえない。長崎は88分、足をつらせた照山颯人を櫛引一紀にチェンジ。
 
アディショナルタイムは5分。前がかりになった大分の背後、広大なスペースをゆったりと使って長崎は追加点を狙う。90+1分にはマテウスを起点にカウンターから笠柳がシュートを放つが、ムンがコースを切って枠の左へと逸れさせた。90+4分には巧みな切り返しで野嶽を剥がした安部のパスを受け、笠柳がムンと1対1の状況に。だが、最後まで粘り強く対応したムンがそのシュートを阻み、1点差を死守して同点の望みを繋ぐ。
 
ただ、最後まで長崎のゴールネットを揺らすことは出来ないまま、試合は終了。一体感を持って体を張り相手の脅威を削りながら、一瞬の緩みを突かれた悔しい敗戦となった。

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