後ろから攻撃を構築していくチャレンジも力を出せず。三平和司の恩返し弾に沈む

8戦未勝利という苦しい状況を打開するために、GKを加えたビルドアップや新たな戦力の組み合わせにトライしチャレンジした今節。だが、現実は、それさえも裏目に出る結果となった。
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新たな刺激を加えて挑んだが…
累積警告による出場停止のデルランに代わり三竿雄斗。ボランチはここまで全試合に先発出場を続けてきた天笠泰輝に代えて野嶽惇也。負傷から復帰した藤原優大が3バックの中央に配置され、彼らのストロングポイントも生かすように、今節は戦い方に濵田太郎を加えたビルドアップも交える方向でスタートした。
ミドルブロックを構える際にもいつもの5-4-1ではなく5-2-3気味に、2シャドーが高い位置からプレスに行く。相手3バックの脇のスペースを突く狙いがあったようだが、これにより重心も低くならずグレイソンとの距離が改善されるかと期待された。
だが、蓋を開けてみればそうはならなかった。序盤こそボールを動かしながら機を見てグレイソンに当てたり藤原が得意のクサビを打ち込んだりしたものの、出足の早い相手にことごとくセカンドボールを拾われたりインターセプトされたりで、攻撃の形が作れずすぐに守備に切り替えざるを得なくなる。

攻撃を構築できず、狙いが裏目に
その繰り返しの中で、徐々にチャレンジは影を潜め、相手のプレッシャーを受けてはバックパスに逃れる場面が増えた。ボールを動かしても後ろばかりで、背後を狙うこともなく、シャドーも足元で受けようと下がってきてしまうため、相手ゴールには一向に近づけない。
その中で何度もカウンターを受け、相手にセットプレーも与えて、最終ラインや濵田が体を張って耐えていたのだが、ミラーゲームの中で、マテウス・レイリアや鳥海芳樹の個のポテンシャルや佐藤恵介の仕掛けなどに上回られ、何度もピンチを迎えた。逆に孤立しがちなグレイソンは相手の屈強な外国籍3バックに潰されてしまう。
なんとか無失点で折り返すまでは行ったものの、47分に先制点を奪われた。藤原のクサビを有馬幸太郎が落とし、それを受けた𠮷田真那斗がマテウス・レイリアと激しく接触。そのこぼれ球を拾って繋げられ、最後は鳥海が持ち込んでのシュート。ペレイラが体を投げ出したが防ぐことは出来ず、ゴールネットを揺らされた。
甲府が勢いづく中、58分にはエドゥアルド・マンシャのミドルシュートを濵田がファインセーブしてしのぐ。三竿、ペレイラ、藤原も相手のクロスを弾き返して耐えた。

選手交代でモビリティーを高め形勢挽回へ
65分に片野坂知宏監督が2枚替え。グレイソンを伊佐耕平、鮎川峻を落合陸に代えると、伊佐がモビリティーを生かして周囲との距離感を近づけながら起点を作るようになった。落合も広い視野を生かして逆サイドやスペースへの展開を増やす。
69分には大塚真司監督がヘナト・アウグストを井上樹にチェンジ。72分、相手陣中央からのドリブルで勢いに乗った伊佐のシュートは枠の上へ。その1分後に野嶽に代えて天笠を投入すると、大分が甲府を押し込む時間帯はさらに増えた。
それを受けたように甲府は78分、マテウス・レイリアに代えて熊倉弘達、内藤大和に代えて三平和司。79分には大分も、疲労した藤原を戸根一誓、𠮷田を松尾勇佑に代えて追撃の色を強めた。

さんぺーの恩返し弾に突き放される
だが、前がかりになる大分の背後を狙って甲府のカウンターが炸裂。81分の三平のシュートは三竿が体を張ってしのぎ、83分の被カウンターは相手の精度不足に救われたが、84分、熊倉のドリブルに崩されて最後は三平のシュートで甲府に追加点を奪われる。
諦めずに追う大分だが、90分の落合のクロスからの伊佐のヘディングシュートは河田晃兵に防がれた。甲府は90+1分、鳥海を大島康樹、田中雄大を遠藤光に2枚替えして逃げ切り態勢に。アディショナルタイムは6分。パワープレーで追う大分の最後のチャンスとなった90+5分、三竿のクロスからペレイラのヘディングシュートも、河田のセーブに阻まれた。
終わってみれば甲府のシュート数20本に対して大分はわずか5本。前半は榊原彗悟の1本のみだった。

第2次片野坂監督体制、志半ばにして
試合後には吉岡宗重SDがゴール裏サポーターとの話し合いに臨んだ。その後、取材に応えた吉岡SDは「応援してくれている彼らが、いまの戦績やフットボールに納得できていないというところで、選手が話すよりもわたしが話したほうがいいと判断し、そこに対しては必ず改善すると彼らに伝えました。当然、選手たちも一生懸命やっていますが、プロは結果がすべて。ファミリーであるサポーターが納得するような結果を出せるよう、クラブ全体として取り組んでいきたいと考えています」と話した。
9戦白星なしで16位にまで転落した現状を受け、クラブは片野坂監督との契約解除を決断。試合翌日の16時にその発表がなされ、同時に後任として竹中穣ヘッドコーチの内部昇格もリリースされた。
「まずはこのシーズンをしっかりと戦うことが重要なので、いまは現在の順位をどう脱却するかということに集中したいと思います」と、声を振り絞った吉岡SDとクラブの判断。チームは全力で、J2残留を目指すことになる。
