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試合レポート

大事な試合での自滅。相手の強みを引き出して3失点無得点

 

ここで勝点3を積み上げれば残留争いの息苦しさはかなり和らぐというシチュエーションだったにも関わらず、終わってみれば0-3の大敗。攻守に精彩を欠くチームは自ら今節でのチャンスを手放してしまった。

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カウンターチャンスを生かせなかった立ち上がり

前節の山口戦で13試合ぶりに勝利したことで緩みが出たというのか。試合後の選手たちからはそういう趣旨の反省の弁も聞かれた。その緩みが生じないように、竹中穣監督は今週のトレーニングで手綱を握り直していたのだが、その調整が裏目に出た部分もあったのか、組織の成熟度への期待が上振れしていたのか。
 
愛媛は1トップの大分の守備に対し、2CBでボールを動かそうと、今節はポゼッションや配球を強みとする吉田温紀を起用。ボールサイドを上げて可変しながら、パスを繋いで攻めてきた。そんな愛媛に関してミーティングで情報を共有していたはずなのだが、それ以前の基本的なところでそれに対応できなかったのが、今節の大分だった。
 
立ち上がりこそカウンターから好機を築いたものの、そこで仕留めきれなかったことが、まず悔やまれる。4分、濵田太郎のフィードを𠮷田真那斗が落としたところから、天笠泰輝、野嶽惇也、三竿雄斗と多くが前へとパワーを出したが、野嶽のクロスはファーに流れ三竿のシュートはゴール前で掻き出されて、天笠のシュートがブロックされたこぼれ球を榊原彗悟が狙って枠の上へ。9分には左サイドのコンビネーションからデルランが送ったクロスに𠮷田真那斗が飛び込むも、このヘディングシュートも枠を大きく外れた。

 

はやる気持ちが相手のストロングを引き出す

最初に勢いよくゴールに迫れたこともメンタル面に影響したのか、あるいは愛媛のポゼッションにまんまと誘われたのか。この試合の大分は、普段の守備よりも高い位置から奪いに行く意識が強く出た。だが、前節の出場停止から復帰した前田椋介と深澤佑太のダブルボランチが、大分のシャドーがプレスに出た背後のスペースを巧みに使いながらボールを引き出し、サイドへと展開。𠮷田真那斗が前に出た裏を狙うように、左サイドへと展開してそこからチャンスを増やしはじめた。
 
守備では石尾崚雅がグレイソンを厳しくマーク。だが、自陣に押し込まれていた18分、ボールを奪った榊原の浮き球をグレイソンが上手く落とし、天笠のスルーパスに𠮷田真那斗が抜け出す。スピードに乗って持ち上がると落合陸へとパスを出したがわずかに合わず、流れたボールを拾った落合のクロスも味方には合わず。
 
相手にボールを持たれて自陣からカウンターを狙いながら仕留めきれずにいた22分、ペレイラからのパスを受けた𠮷田真那斗のトラップが大きくなったところを前田にさらわれ、堀米勇輝がエリア内で要求する杉森考起に渡すと杉森は佐藤亮へと横パス。佐藤が個人技を生かして沈め、愛媛に先制を許した。

 

修正できないまま後半立ち上がりに2失点目

愛媛は26分にも深澤のシュートがクロスバーに弾かれたこぼれ球に佐藤が詰めるビッグチャンスを迎えたが、ここは濵田の正面に飛んで命拾い。大分は32分に天笠のクサビを受けた落合の反転シュートが枠の外へ。
 
39分にはクロスを上げようとした三竿が足を痛め、すわアクシデントで交代かと思われたが、三竿はプレーを続行。前半アディショナルタイムには野嶽が前田に倒されて得たFKを榊原が蹴ったが、デルランは折り返せず。その後も守備のカバーに入っていた野嶽がボールを奪って前線へと送り、落合が落としてスピードに乗ったカウンターを繰り出したが、素早く帰陣する愛媛を前にボールを保持して崩す図式へと持ち込まれ、崩しきれずに0-1で前半終了。
 
前半のうちには修正しきれず、後半からの反攻に期待されたが、いきなり47分、スルーパスに抜け出した藤本佳希にシュートを許し、ニアポストに当たって胸を撫で下ろす立ち上がり。50分にはボールを動かされ押し込まれたところから福島隼斗のクロスにワンタッチで佐藤に合わせられ、2点目を挙げられた。

 

立て続けの失点。テコ入れが遅きに失する

さらに53分には三竿のペレイラへのパスをカットした杉森が、濵田の頭上を越えるループシュートで3点目。上手くいかない現状にテコ入れしようと竹中監督が3枚替えの準備をしていた間に、あっという間に点差を広げられてしまった。
 
54分、落合を池田廉、三竿を宇津元伸弥、榊原を伊佐耕平に代えて追撃する大分。だが、セーフティーリードを得た愛媛に余裕をもって自陣を固められ、宇津元の推進力や伊佐のモビリティーを生かすことが出来ない。池田がボールを動かして相手ブロックの攻略を図る中、57分には愛媛が福島に代えて黒石貴哉。
 
58分には宇津元のシュートがわずかに枠の右へ。65分には天笠のクロスに合わせたグレイソンのシュートが辻周吾に阻まれた。67分、竹中監督がペレイラを戸根一誓に代えてその足技で愛媛の守備侵食を期すと、その1分後には青野慎也監督が佐藤と藤本に代えて甲田英將と村上悠緋を投入する。

 

せめて得失点差を縮めたかったが…

大分は一矢報いようと、愛媛は目の前に迫る今季3勝目をより大きな手応えに繋げようと、最後まで攻め合う展開。だが、67分のデルランのヘディングはクロスバー。72分には深澤のシュートを濵田が押さえ、76分には村上のシュートが枠上へ。90分の宇津元のFKに合わせた伊佐のヘディングシュートも枠上へと逸れ、アディショナルタイム、天笠のパスを受けた宇津元のカウンターからのシュートは枠の右。宇津元のクロスからのグレイソンのヘディングも枠の上へ。大分はついにゴールネットを揺らすことが出来ず、最下位の愛媛を相手に0-3で敗れた。スコア以上に、攻守に精彩を欠いたまま90分間それをほとんど修正できなかったことが、なによりも屈辱的だった。
 
奪いに行くつもりで不用意に食いついて背後のスペースを使われ続ける中で、プレッシングを封印してスペースを消すことを徹底する守備へと切り替えられなかったことが残念だったし、ベンチももう少し早く手を打つべきだったかもしれない。守備組織の崩れから距離感が悪くなり、攻撃のクオリティーも落としてしまう悪循環で、自滅した今節。残留争い中のシーズン終盤には、なによりも平常心で戦うメンタルの強度も問われる局面が続く。残り7試合、ここ最近で手応えを感じていたものを再び武器に戦えるよう、早急な立て直しが求められる。