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試合レポート

アクシデントにより戦術変更も、一体感をもって+1。ベースが整ってきた手応えも

 

昇格争い中の仙台に対し、隙のない守備から徐々にリズムを作りはじめた。退場者が出たことで戦術変更を余儀なくされた後も、全員で一丸となって乗り切った一戦だった。

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まずは構えて入った立ち上がり

戦いぶりに手応えを感じられた前節・秋田戦と同じメンバーでスタートした一戦。一方の仙台は前節の大宮戦から先発5人を入れ替え、攻撃の色合いを強めた布陣で乗り込んできた。
 
可変気味に高い位置を取る真瀬拓海のところでどのように対応するかを試合前にもあらためて確認し、5-4-1のブロックを構えて試合に入ったチーム。立ち上がりは構える大分に対して仙台がボールを動かしながら攻略する図式でそのまま耐える展開になるかと思いきや、徐々に攻め手を探る大分がペースを握りはじめ、集中して相手を遮断しボールを奪うと連係しながらゴールに迫った。
 
10分、菅田真啓の浮き球に合わせた宮崎鴻のヘディングシュートは枠の上。21分には押し込まれた状態から鎌田大夢のクサビをデルランが跳ね返し、そのこぼれを真瀬に繋がれての相良竜之介のシュートはペレイラがブロック。最後は石尾陸登のシュートが枠上に逸れたが、攻守ともに迫力のあるシーンだった。

 

徐々に攻め手を開拓してペースを握る

コンパクトな陣形の中で中盤の選手たちが距離感よく立ち回る中、徐々に攻撃機会を増やしていく大分。それまでも右サイドのコンビネーションからクロスを送る形は作れていた中で、27分には野嶽惇也の浮き球にグレイソンが頭で合わせて枠の左へ。
 
29分にはグレイソンが高い位置でボールを収め、池田廉が繋いで天笠泰輝のシュートが枠上へと逸れた。30分にはわずかにオフサイドだったものの三竿のクロスに天笠が飛び込むシーンも。34分にも右サイドの3人目として抜け出した茂のクロスがファーに流れたところから三竿が折り返し、池田が落として榊原彗悟のシュートが枠上へ。
 
ゴールネットを揺らすには至らないものの、連動して迫力あふれる攻撃を繰り出して、前半はすっかり大分のゲームとなっていた。

 

グレイソン退場による影響は

後半もせめぎ合いが続く中、54分には三竿のアーリークロスに飛び込んだグレイソンのヘディングシュートが枠の左へ。
 
後半の仙台は武田英寿をアンカー気味に、鎌田に前目の位置を取らせるかたちでボールを動かすようになり、それが奏功して試合の流れがやや仙台へと傾きはじめた時間帯。それでも戦術の要所に大きな変化はなく、竹中穣監督もじっくりと戦況を見極めようとしていた56分に、この試合の大きなターニングポイントが訪れた。
 
マテウス・モラエスと接触したグレイソンにレッドカードが提示され、大分は30分以上を数的不利状態で戦うこととなる。ただちに池田廉を前線に配置した5-3-1へと陣形を変更し、10人での守備ブロックの強固さを増した。ここまでの試合の流れも踏まえれば、あるいはこの展開に頭を抱えたのは、仙台の森山佳郎監督のほうだったかもしれない。

 

明確な図式で集中を切らさず

64分、大分は池田に代えて伊佐耕平を1トップに配置。67分には仙台が宮崎に代えて山内日向汰を投入し、山内が左SH、相良が2トップの一角へと移った。モビリティーを増して大分のブロック攻略を狙う仙台だが、岡本拓也を中心にしっかりとオーガナイズされた大分のブロックには隙がなく、武田からのスルーパスもことごとく通らない。70分、押し込まれた状態から放たれた武田のシュートは三竿が体を張って防いだ。
 
77分には大分が3枚替え。茂を宇津元伸弥、榊原を薩川淳貴、足を痛めた天笠を野村直輝にチェンジして、ガッチリとブロックを固めた自陣からのカウンターチャンスを狙う態勢を整える。早速その直後に宇津元が攻め上がる場面を迎えたが、さすが堅守を誇る仙台だけに守備の意識も損なわず、カウンター対応にも隙を見せない。
 
仙台は81分、荒木駿太に代えて189cmの中田有祐を投入して前線に高さを加える力業へ。サイドから積極的にエリア内へとボールを送ってくる仙台を、水際で集中して対応する最終盤。岡本のクリアボールを拾った菅田のクロスをペレイラが掻き出し、そのこぼれ球を持ち変えて放った相良のシュートを、再び岡本が決死のブロックで跳ね返す。84分には右CKから放った相良のヘディングシュートをムン・キョンゴンが正面でキャッチ。

 

チームのベースが確立してきた感触も

どうしても崩れない大分に対し、仙台は89分、ボランチの武田を下げてFWの安野匠を投入し前線にパワーをかけた。仙台が最後に大分の牙城を突き破るか、大分が守りながらカウンターでひと刺しするかという白熱した戦況のまま突入したアディショナルタイムは6分。
 
90+1分、真瀬の折り返しからの郷家友太のエリア内での反転シュートは枠上に逸れ、90+2分の中田のヘディングシュートはムンがキャッチする。90+4分に野嶽を落合陸に代えて時間を使った大分は、90+6分にはカウンターから薩川のシュートシーンも作り、時間を使い切った。
 
これまでいくつもの試合で課題となってきた守備ブロックの緩みもなく、前節の秋田戦から継続して、ボールを奪ったあとの攻撃でも落ち着いて前進。ここに来てチームのベースが、ようやく固まりはじめているように見える。
 
17位・大分と16位・熊本が揃って勝点1を積み、18位の富山が札幌に敗れたため、降格圏との勝点差は8に開いた。残留争い的には少し楽になったかたちだが、試合後の竹中監督はシンプルに勝てなかったこと、得点できなかったことを悔しがった。三竿や岡本も、視線は残留よりも上を見ている。残り5試合、苦しいシーズンの締めくくりに、チームはどんな姿を見せてくれるか。