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勝利へのカギ

【インタビュー】小澤正風社長「枝や葉が揺れたとしてもしっかり根が張っていれば」

 

創立30周年を迎えたクラブを、昨年から率いる立場になった小澤正風社長。最初はマネージャーとして入社し、クラブ史のほとんどを自らの問題として経験してきたリーダーが、いま進めていることを聞いた。

 

会社として体をなすためにはやはり黒字

——まずは昨年1年間、社長のお仕事をされてみて、いかがでしたか。
 
日々、迷いばかりでした。このやり方で合っているのかどうかとか、いろんなことを悩みながら。
 
——最も悩ましかったのはどのあたりなんですか。
 
やはりいちばんは、トップチームの戦績です。最初はよかったけど後半順位が落ちてきたときに、会社として何が出来るかということを考えたときに、本来なら資金を注ぎ込んで補強という手段に出ることになるでしょう。でも一方で、経営の部分も考えなくてはならないので、そこは我慢しなくてはならない。果たしてその選択が正しいのかどうなのかは、ずっと考えていましたね。
 
——そこで補強せず我慢した代わりに、黒字決算という結果を得たということなんですね。
 
そうです。そうなんだけど、果たしてそれでよかったのかどうか。掴みかけていたものに対して、掴みに行かなかったというわけではないんですが、それ以上の投資はしなかったという話で。人によってはここで掴みに行くという判断をすることも当然、あるでしょうし。
 
——一昨期は掴みに行こうと投資して、赤字決算となっています。その補填の意図も。
 
そうですね。昨年まで3期連続で赤字だったし、前期決算は186百万もの赤字を出したので、なんとか黒字に
転換しないと会社として認めてもらえないし、コロナ禍だったからという理由もいつまでも通じない。会社として体をなすためにはやはり黒字であるということが大事だという判断をしました。
 
——黒字にするために採った施策は。
 
昨季はシモさん(下平隆宏前監督)が観客動員のために強くメッセージを打ち出してくれて、入場者数1万人超えの試合が6試合出来ました。社員たちにも「会社として黒字にしようよ」と呼びかけた中で、クラウドファンディングも含めていろんな施策をそれぞれに考え頑張ってくれたので、なんとか社員の努力のお蔭で黒字に転換できたというところです。
 

根を張りつつ新しい市場も狙っていく

——今季はスタート時にユニフォームの背中スポンサー不在という状況もありましたが、一方でアドボードスポンサーなどは増えているんですよね。営業方針の転換などもあるのですか。
 
はい。今季のスポンサーの撤退については少し想定外なものでもあったのですが、ユニフォームスポンサーに関しては、金額が大きいぶん、今回の様な企業判断を下されることが、これまでもそうですし、これからもあり得ることなんですよね。どれだけ我々が努力を続けても、先方の会社のご都合、ご判断次第なので。
 
そういうことが起こり得る中でも一気に経営危機に陥るようなことがないようにするためには、やはり根っこの部分を強くしておかなくてはなりません。地元大分での営業活動に力を注いでていくことが必要です。そうすれば枝や葉が多少の風が吹いて揺れたり落ちてしまったとしても、しっかり根が張っていれば、企業として存続できるし、やり直すことも出来るので。そういった意味でも、大分県内の企業様にアプローチして、しっかりと根を張るという営業活動が大事だと考えています。
 
——他にクラブの収入を増やす仕組みも考えているのでしょうか。
 
おそらく従来のスポンサー収入とチケット収入、グッズ販売やスタジアムでの飲食等の収入に頼るだけでは今後、行き詰まるだろうなと僕は考えていて、ある程度、新しい収入源の道筋を確保しなくてはならないなと。
 
——社長に就任した当初から「フットボール以外の部分でも収入を」とおっしゃっていましたね。
 
ひとつはクラブライセンス。スポンサー企業とのコラボレーション商品を通じて一般消費者の生活に入っていく。金額自体はそれほど大きなものにはならないかもしれませんが、日々の生活の中でトリニータが近くに感じられるということも大きな利益のひとつです。女性に人気のファッションブランドのキャセリーニさんとのコラボ商品開発もその一環ですよね。また、昨年12月には台湾サッカー協会にも訪問しました。そうした行動を起こすことで、新しい市場の開拓も狙っていくつもりです。
 

新たなアジアマーケットへの進出

——台湾サッカー協会との提携が、具体的にはどのように市場開拓に繋がっていくのでしょうか。
 
かつては大分県内のプロチームと言えばトリニータだけだったので、例えば野球をされている方もみんなトリニータを応援してくださっていたのですが、いまや大分県内には野球チームや、フットサルもバレーボールもサイクリング等いろいろなスポーツ団体があります。個々人の応援するスポーツがある。サッカーにしてもヴェルスパ大分さんやジェイリースFCさんもある。これだけクラブチームが出来ると、企業さんとしても平等性が発生したりしますよね。割合はいろいろですが、以前は100頂けていたものが80になったり50になったりということがあり、さきほど話したように大分で根を張るということは当然努力は続けつつも、大分県内だけでは市場環境が厳しくなっている現実がある。九州でも、いまは各県にJクラブがあります。関東や関西に目を向けても、そこにはJ1の強豪クラブが並んでいますし、J2である大分をスポンサードする理由をどこに見出して頂くか。そこではどうしてもJ1、J2、J3というカテゴリーや立地の違いが生まれてしまうんですね。
 
そこで、いま日本はFIFAランキングで18位だけど、台湾は157位。そういうところではトリニータはカテゴリーに関係なく「Jリーグのチーム」という捉えられ方をする。「Jリーグのチームが来てくれた!」という迎えられ方をするんですよ。そういうところを市場として狙っていければと。当然、大分や日本でも営業は続けていくんですけど、やはり同時にブルーオーシャンを探しにいかないと、おそらく行き詰まってしまう。そう考えて、今、台湾や澳門等と関係を構築しようとチャレンジしています。
 
——それによって台湾サッカー協会側にはどういうメリットを提供できるのですか。
 
先日、台中にある高山薫くんが所属するクラブの協力の下、サッカー教室と指導実践を行いました。今までもサッカー教室だけならジュビロ磐田などがやっているんだけど、実は台湾側のニーズは指導者の育成にあるんですね。現地の指導者が育たなくては結局、その地域の子供たちも育たないですよね。それで、指導者を派遣すると言っても1人だけポンと1年間派遣するということもできないので、僕らのアカデミーコーチ陣が行って指導実践を行うことにしたんです。これが成功すればパッケージとして他の地域にも持ち出したいと考えています。いずれはそのサッカー教室や指導実践にスポンサーがついてもらって、その先としてトリニータのスポンサーにまで繋がってもらえたらと。
 
——台湾との繋がりは高山選手がきっかけになったんですか。
 
いや、もともと以前から台湾でサッカー教室をやりたいといった話はあったんです。でもコロナ禍で話が流れてしまっていて、ようやく今年、高山くんの所属する台中のクラブの協力を得て開催することが出来ました。で、台湾でサッカー教室を行うにあたっては事前にサッカー協会に筋を通しておこうと昨年末と今年2月にご挨拶に伺って、それなら協会として協力しましょうということになったんです。
 
——そういう繋がりからトリニータが得るものは。
 
熊本県にTSMCが進出したように、大分県にも台湾の企業がもっと進出するということがあるかもしれないし、サッカーをひとつのコンテンツとしてわれわれが大分県に貢献出来れば嬉しいし、その活動が交流のきっかけになれればそれはそれで歓迎です。また、その先にサッカーではないところでもいろいろと広げていければいいかなと考えているんです。極端な話、トリニータがサッカーチームだと認識されていなくてもいいくらいに。たとえば「ニータンの会社」として知名度が上がるのでもいいし(笑)。大分県と協力してとり天を向こうで流行らせてもいいし、トリニータ丼なんかも。台湾にも大分県人会があるので、そういうところと連携していろいろと出来ないかなと思っています。
 
——それは…台湾の歴史に残るようなことが起きればいいですね。
 
はい。でも台湾は既にいろんな企業が狙っていて、もうそろそろ飽和状態かもしれません。だからちょっと違うアジアマーケットとして澳門や他の地域にも進出しようかなと。
 
——Jリーグ自体がアジアとの繋がりの強化を、数年前から推進していますもんね。
 
はい。でもタイとかシンガポールとかベトナムとかは、もう他のビッククラブが結構行っちゃっているんですね。それをあとから追うんじゃつまらないなと思って。出来ればトリニータがいちばんに先陣を切れる国に行きたいんです。
 

Jリーグは共存の時代から競争の時代へ

——では社長就任1年目から、やりたいことは着々と出来ている感触ですね。
 
まだまだですけれども、いつかはやりたいと前々から思っていたことです。スポンサー収入やチケット収入だけに頼っていても、コロナ禍があったし、今後大きな震災だってあるかもしれない。何が原因で土台がぐらつくかわからない。だからやっぱり新しい収入源を見つけておかないと、いまの流れを見ていると、Jリーグも配分金に格差をつけるなど、共存の時代から競争の時代へと移行していますし、体力的にもたないクラブが出てくる可能性もある。最悪潰れるクラブも。育成型クラブはとにかくいい選手を輩出する事に注力するでは、応援してくれている人たちに対して失礼なので、やっぱり優勝を目指したり上を目指したりはしなくちゃいけない。そのためにも、クラブの収入になるようなマーケットの開拓も必要なんですよね。
 
——そうやってクラブの土台がしっかりしてくれば、もっとトップチームやアカデミーの環境も整えられるように。
 
そうですね。やっぱり日々のトレーニング環境の整備は非常に大事なので。
 
——昨年はクラウドファンディングでトレーラーハウスを購入しました。
 
みなさまのおかげで立派なものが整いました。出来ることならクラブハウスの建て増しや建て直しをしたいところですが、法律的な問題もあり、苦肉の策としてのトレーラーハウスにした経緯もあります。でも、出来る手段がひとつ見つかったということで、まずはやることが大事だと思っています。それに移動が可能なトレーラーハウスであれば、災害が起きたときなどにも大分県に使ってもらえますからね。いろいろと違った活路を見出すことも出来ます。

 

動き出したのは危機感から

——これまでもクラブはそういった動きをしようとしているようでありながら、なかなか動き出せずにいました。いまいろいろと踏み出せるようになったのは。
 
危機感ですかね。青野社長も榎社長も、クラブの事情を踏まえてとにかく堅実にが求められてきたと思いますが、それだけだとこれからは厳しくなると。
 
——そういう意味で、コロナ禍明けで3期連続赤字という状況で社長に就任するのはかなりプレッシャーだったのでは。
 
ありました。前社長の榎さんから次の社長に指名されたとき「僕は、今までの社長の様に県から派遣されたわけでもないし、水戸黄門の印籠みたいな一発逆転出来るようなものは何も持ってないですけど」って言ったんです。でも、ずっと一社員としてやってきた僕が社長になることで、他の社員たちも「頑張れば上のポジションに行けるんだ」という可能性が見えることって、やりがいに繋がると思ったんですよね。いつまでも県から社長を派遣して頂いて、その繰り返しではクラブとしての積み上げられるものもないし。そういった面では僕が引き受けるしかないのかなと。
 
そりゃあ僕だって正直、勝負事に関して勝ち馬に乗りたいというのはありますよ。みんなが「J1行くぞー!」「おー!」って盛り上がっていたら「ああ、いいなぁ! こっちの船に乗りたい!」って思うけど、どこかで凧糸を逆の方向に引っ張ってコントロールしている人がいないと、凧、どこかに飛んでいっちゃいますから。
 
だから、そういう面では僕は周囲からはシビアに見えるのかもしれません。こっちで糸を引っ張ったりしているぶん、「本当に一緒に戦ってくれているの?」とか「勝つ気あるの?」とか「なんか冷めてない?」とか言われることも随分ありますし。
 
——一方で社長がその役割を担っていれば、逆に社員をのびのびさせることが出来るという面も。
 
そうかもしれませんね。社員にはいつも同じ目標に向かって勢いを持って進んで欲しいですから。
 

自分たちの環境は自分たちで変えるしかない

——人事異動も含め、社内の組織マネジメントに関してはいかがですか。
 
みんな、意欲的に仕事に取り組んでくれています。僕が社員のみんなに言うのは「自分たちの環境は自分たちで変えるしかない」ということ。自分たちがしっかり稼いで自分たちの働く環境を変える。その意識を持たないと、いつまで経っても自分達の置かれている環境は変わらないし給料も上がらない。
 
そういう意味で、まず黒字という目標を達成できたことは、少しずつ社員がそういうマインドになってきてくれているのかなと。前向きにやってくれている社員も多いです。
 
「人を育てる」という意味では、正直、社員の長所を伸ばしたほうがいいと思うんです。サッカーで言えば足の速い選手は足の速さが生きるポジションに置いたほうがいいじゃないですか。全てが適材適所にはならないかもしれないけど、そのへんの事も考えて社員をその部署に置いて、活性化していきたいと思います。
 
——青野社長時代に負債をなくし、フラットになったところで榎社長が就任し、小澤社長がまた新たに一歩、企業として自立していこうという方向性は見えていますね。
 
一人一人がこの会社を自分たちで作っていくという意識を持つこと。経験値の高い社員が引っ張って、自分たちでその与えられた仕事の中に楽しみを見出して、自分たちで作り上げていかないといけないですからね。特に僕たちはエンターテインメントを担う会社なのだから。
 
——最近、社員の方々の表情からも明るい印象を受けます。
 
結構、任せているから(笑)。締めるところは締めつつ。
 

ブルーオーシャンを探していく

——ではこれから力を入れていきたいところは。
 
種を蒔いて、まだ芽が出ていない事業ですね。台湾でサッカー教室を実施したけれども、その次の目的へと。それをどう事業化していくかということも含め、さきほど話したように、新しい市場、ブルーオーシャンを探していきます。当然、レッドオーシャン、いまの競合があるところでの営業活動、ユニフォームスポンサーを探すといった大前提のところも継続しながら、複数の収入の柱を模索していきます。こっちが何かで潰れたとしても別のこっちで生きていける、というかたちに。ある意味、商社ですよね。
 
——今季のSBI損保さんのユニフォームスポンサー撤退のようなアクシデント的なところもありましたしね。
 
やはり、起こりうることですからね。過去にもマルハンやペイントハウス、トライバルキックス、オメガプロジェクトと大型スポンサーの急な撤退があり、その都度、危機に陥っていたんです。そうなるたびに「どうしよう」と穴を埋めるために奔走して疲れ果てて。
 
——それを全部、社員として見てきていますからね…。
 
そう。だから、そうならないようにと。スポンサーを継続するかどうかは最終的にはスポンサー様の企業判断によるところが大きいので、その結果によってこちらがガクンと来てしまわないような態勢にもしておきたいんです。
 

チームがJ1で戦えるようにわれわれも狙っていく

——スポンサー収入やチケット、グッズ収入では経営規模を大きく出来ずに悩んでいるJクラブが多い中で、新しい試みだと思います。西山GMのチーム編成方針にしても、大分FCは先陣を切ることが多いですね。
 
うちのような会社は、人の成長過程において一人が何役もやらなくてはならないですからね。みんなそうやって成長していきました。(西山)哲平もそうだし、かつて大分で一緒に仕事をしてきた鹿島の吉岡宗重FDも、町田の原靖FDも、シントトロイデンCEOの立石敬之さんもそうだし。うちで運営スタッフをやっていた中村くんも、いま鹿島で頑張っているし。そのときは一人何役もこなさなくちゃならなくて大変かもしれないけど、それが力になって、いまこの厳しいサッカー界でやっていけているので。
 
そういった面で言うと、うちは監督も、いろんなところで活躍する人が多いですよね。一時期は小林伸二さん、石﨑信弘さん、シャムスカ、ポポヴィッチ、田坂和昭さん、手倉森誠さんと、トリニータを率いた経験を持つ方たちが同時にJリーグで監督として指揮を執っていたこともありました。うちで監督のキャリアをスタートした人も多いですし。
 
選手だけでなく監督もスタッフも、大分から成長して上を目指す。そういう会社でいいと思うんです。この写真、2002年に初めて上がったときの、大宮戦のときのなんだけど。
 
西山哲平、高松大樹、吉田孝行にクラウディオがいて。誠さんがいて。これは柴田さん。この登場人物みんなが現在もそれぞれの道で活躍しているのがうれしいですね。
 
——かつて一緒に働いた人たちがこうやって繋がりを持ち続けていられるのはすごいことですね。
 
それもチームがここにあるからこその話で。そしてそれはまたいつか戻ってこられる場所があるということなので。
 
——では、社長としてのこれからの目標をお聞かせください。
 
フロントとしては、やはりトップチームを支えることとアカデミーを含めた環境整備。現場が気持ちよく仕事できるようなバックアップ体制が出来るようになりたい。そして大分の子供達に夢を与えられる存在になりたい。
トップチームが、J1で戦えるようにわれわれもそこを目指していく。みんなで一緒に作っていく。後押ししていく。そのさきに、J1昇格が見えてくると考えています。
 

初めてJ1昇格を果たした2002年11月2日、J2第41節・大宮戦後の一枚。後列右で現役時代の高松大樹さんと西山哲平GMに挟まれているのがマネージャー時代の小澤社長

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