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試合レポート

対策された、それ以上にインテンシティーで負けていた。いわきの前に0-2完敗

 

現在の弱点を狙われたところもあったが、シンプルに出足やセカンドボールの競り合いで相手に上回られ続けた印象の90分。個々の強度も選手間の繋がりも、課題はまだ継続中だ。

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出足で遅れを取り立ち上がりから劣勢に

ハイプレスの守備も、縦方向の攻撃も、前への矢印を強く出してくる相手に対し、こちらも構築中の「攻守シームレスなフットボール」をある程度表現できれば、互いに攻め合う好ゲームになるのではないかと期待していた。
 
ミッドウィークにルヴァンカップ・新潟戦を戦ったいわきだが、大幅なターンオーバーにより連戦の影響はなし。今節はリーグ前節の清水戦から先発1人のみを代え、サブメンバーのほうはチーム内競争を促しての18人で乗り込んできた。大分は前節の千葉戦から3人を入れ替え。保田堅心を先発させたのは、おそらくスペースの生まれるマッチアップの中で彼の推進力に期待したものと思われた。
 
だが、キックオフ直後から勢いで上回ったのはいわきだった。その戦いぶりには明快な大分対策も見て取れた。トップ下の位置で起点を作る長沢駿にはアンカーの大西悠介が厳しくマーク。インサイドハーフとWBの関係性でサイドに起点を生み出すと、積極的にクロスを狙ってくる。ただ、そういった戦術以前に、出足の早さで大分を上回り、セカンドボールをことごとく自分たちのものにすると、迷いなくゴールに向かった。8分には西川潤が左足を振り抜き枠の左へ。西川はこのあとも何度もシュートを放ち、精度不足で得点にはならなかったものの、大分にとっては脅威となっていた。

 

太郎のビッグセーブもありスコアレスで折り返す

14分、大迫塁のクロス対応にゴール前まで戻った薩川淳貴が負傷。予定外に宇津元伸弥と交代を余儀なくされるアクシデントに見舞われた。多くの時間を劣勢に過ごしながら、19分にはラッキーなかたちで左CKを獲得。保田のキックは相手のワンタッチあって外に流れ、それで得た弓場将輝の右CKの流れから20分、松尾勇佑がミドルシュートを放ったが立川小太郎に正面でキャッチされた。22分には相手陣中央からの保田のFKを長沢が折り返し、混戦の中で藤原優大が合わせ損なって最後は宇津元が飛び込むがボールは枠上へ。
 
いわきは30分、有馬幸太郎を狙ったゴールキックからセカンドボールを拾って素早く攻め西川がシュートして枠の上。西川は35分にもシュートして弓場にブロックされた。さらに37分には保田からボールを奪って自らシュートしたがこれも枠を捉えきれず、大分としては西川の精度不足に助けられている様相になってきた。
 
なんとか前半を無失点でしのごうと、ディフェンスラインを束ねる安藤智哉と藤原は話し合っていたという。前半から4分設定されたアディショナルタイムには大きなピンチ。大西がゴール前に送った浮き球が競り合いの中でこぼれたところを山口大輝にシュートされる。失点する流れだったが、横っ跳びした濵田太郎が右手で掻き出して九死に一生。苦しい展開ながらスコアレスで試合を折り返した。

 

後半の修正で築いた一度きりのビッグチャンス

ハーフタイムに修正を施し、それによって奇襲的に築いた後半立ち上がりのビッグチャンスが決まっていれば、展開はもう少し違うものになっていたかもしれない。実際、この試合で得点機があったとすればその一度だけだった。
 
片野坂知宏監督は松尾を野村直輝、保田を小酒井新大に代えて後半をスタート。長沢を渡邉新太と2トップ状態に並べ、野村が中盤で起点を作る役割を担った。おそらくそんな大分の出方を、いわきがまだ見極める前の46分、藤原の長いパスに宇津元が抜け出すと左足でゴール前へとボールを送る。相手守備陣2人を引き連れて走り込んできた渡邉の絶好機は、だが、立川に正面で阻まれた。
 
野村が入ったことにより野嶽惇也とのコンビネーションも生まれ右サイドが活性化したが、大分の修正へのいわきの対応は早かった。前がかりな立ち位置を取る大分に対し、いわきもさらにアグレッシブさを打ち出してくる。ラインを下げることなく、相手のアンカー脇で起点を作る野村に対し、CBが潰しに出た。そのスペースをケアするスライドも統制が取れており、隙がない。
 
いわきが57分に有馬に代えて近藤慶一を投入すると、その直後に近藤が先制点をものにした。右サイドからの大迫のFKを濵田が処理ミスし、そのこぼれ球を押し込まれた。

 

失点を境に攻めるパワーが落ちた終盤

劣勢をしのぎ続けていたチームも、これで気落ちしたのか。以降、攻めるパワーがぐんと落ちたように見えた。71分にはいわきが大迫と西川をベンチに下げ、坂岸寛大と白輪地敬大を投入。谷村がインサイドハーフに落ち、白輪地と近藤の2トップとなった。72分には大分が、長沢に代えて茂平。昨年の天皇杯2回戦・ヴェルスパ大分戦で負傷して以来319日ぶりにピッチに立った生え抜きは、最初に右SHに入り、野村がトップ下に移動した。
 
なんとか反撃したい大分だったが、74分、相手左CKの流れで五十嵐聖己のクロスから照山颯人がヘディングで2点目。濱田も果敢に出たのだが、相手に先に触られてしまった。77分、大分は渡邉を伊佐耕平にチェンジする。
 
いわきは83分、先制弾の近藤が負傷して加藤悠馬と交代し、谷村が再び最前列へ。同時に加瀬直輝を大森理生に代えると五十嵐が右WBに上がり大森が右CBに入った。

 

個にも組織にも足りないものの見える試合

一矢報いたい大分は、茂を左SH、野村を右SHに移し、宇津元と伊佐の2トップで背後を狙おうと配置転換。さらにアディショナルタイムには安藤智哉を前線に上げてパワープレーも敢行したが、ついにネットを揺らすことは出来ず、シュート数は前半2本、後半1本にとどまった。
 
アンダーアーマー社のサポートによりフィジカル強化に注力してきたいわきのプレーヤーたちは、トランジション重視の戦術トレンドにそって選手のアスリート化が進む現代サッカーで有利となる個々の強度を身につけている。昨夏から指揮を執るレバークーゼン好きの田村雄三監督が落とし込んだ明快な戦術がそこに上乗せされ、迷いなくタスクをこなすことでパワーを出してくるチームだった。
 
そういう相手に太刀打ちするにあたり、大分に足りなかったものは何か。試合後、片野坂監督は秋田戦後と同様に、相手の徹底ぶりに言及した。個々の意識なのか技術なのか判断力なのか。たとえば長沢や野村が執拗にマークされながらキープしようとしているとき、サポートに行ける選手は周囲にいなかったか。
 
ミックスゾーンでの立ち話ではあったが、長沢に現在の攻撃における改善すべきポイントを聞いた。別記事で公開する。

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