前節までの課題克服へとトライ。手応えも見えつつ隙が生まれて2失点

前々節の今治戦、前節の秋田戦で改善できなかった課題克服へと舵を切ったチーム。攻守に積極性を打ち出し、特に前半は攻撃にも手応えが感じられたものの、守備の綻びを突かれ2失点。今季初の連敗で後半戦スタートとなった。
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立ち上がりから攻守に積極性を打ち出す
天皇杯2回戦から中2日。チームは札幌から神戸へ移動して一部のメンバーを入れ替え、徳島戦に向けての戦術共有と調整を行なってから徳島入りした。スターティングメンバーは前節の秋田戦と同じだが、ベンチには天皇杯・札幌戦で存在感を表した薩川淳貴や小酒井新大、松尾勇佑らが並んだ。
リーグ最小失点の堅守を誇る徳島を相手に、立ち上がりから積極的にゴールを狙う大分。運動量豊富にサポートしあいボールを動かして複数のCKを獲得すると、4分には宇津元伸弥の左CKのこぼれ球に反応した野嶽惇也が勢いよく足を振り抜いて枠の左。12分にも宇津元の左CKのクリアボールを中川寛斗がワンタッチで落として池田廉が胸トラップからのシュート。これは田中颯のファインセーブに阻まれた。
相手のダブルボランチ+組み立てに参加する杉本太郎をマンマーク気味の守備で封じながら相手のミスを誘ったりセカンドボールを拾ったりして出足よく攻めながら、序盤は完全に大分のペースだった。

主導権を握りながら一瞬の緩みで先制を許す
だが16分、巧みなポジショニングと連係からワンチャンスを生み出した徳島が、タレントのポテンシャルを存分に生かして先制に成功する。マークについているペレイラを引き連れた渡大生がタイミングよく中盤のスペースに顔を出し、そこで落としたボールを児玉駿斗がスルーパス。抜け出したルーカス・バルセロスにはデルランが対応していたが、大外を駆け上がってきたエウシーニョに気を取られた一瞬、目が切れて剥がされ、ゴール左隅へと蹴り込まれた。
それでも攻め続ける大分。サイド攻撃が機能してセットプレーのチャンスを多く築く。29分には宇津元の左CKに有馬幸太郎が頭で合わせて枠上へ。31分の宇津元のFKに合わせた有馬のダイビングヘッドは田中にキャッチされた。
徳島は高木友也が高い位置を取り杉本が児玉や鹿沼直生と中盤に、渡が落ちてバルセロスが背後を狙うといった立ち位置で大分の守備を回避しつつチャンスを窺う。41分には自陣でボールを奪った渡のスルーパスからバルセロスに抜け出されエリア内に進入されたが、ペレイラが巧みにショルダータックルを見舞いファウルなしで阻止した。
43分には有馬がセカンドボールを左に展開し、宇津元のスルーパスに抜け出したデルランのクロスをファーから走り込んできた𠮷田真那斗が頭で叩きつけるシュート。GKの手前でバウンドした難しい弾道だったにも関わらずまたも田中のビッグセーブに掻き出され、その後のセットプレーも実らずに、試合は1-0で折り返した。

攻めているのは大分なのに…
後半開始と同時に増田功作監督は山田奈央をカイケに代え、3バックの中央の強度を高めた。立ち上がりにいきなり、大きな裏への浮き球に抜け出したバルセロスがクロス。杉本が反応したが上手くミートせずに助かった。攻勢を強める徳島だが、大分も攻める姿勢を崩さない。だが54分、またもバルセロスの裏抜けから徳島が追加点。右からのスローインを渡が落とし児玉が背後へとボールを送ると、デルランがマークを外した一瞬でバルセロスがフリーになり、カバーに入った野嶽と飛び出してきた濵田太郎に挟まれながらループシュートで仕留めた。
ボールを握る大分は、57分には左サイドのパス交換から天笠泰輝がアーリークロス。ゴール前に有馬が走り込んだが山越康平と青木駿人に挟まれて潰される。前節の千葉戦で3失点を喫した徳島は今節、自慢の堅守を取り戻そうと守備のアラートさをさらに増しているように見えた。
61分、片野坂知宏監督は伊佐耕平に代えて屋敷優成を投入。山田からカイケに代わった最終ラインの裏を突かせる狙いと見られた。だが、中川の浮き球スルーパスも𠮷田のロングスローも、ことごとくゴール前で徳島に対応されてしまう。

最後までバルセロスの脅威にさらされる
徳島は70分、渡と杉本をトニー・アンデルソンと玄理吾に2枚替え。その2分後には大分も、中川と宇津元を小酒井新大と薩川淳貴に交代し、池田がボランチに落ちて小酒井を右シャドーに配置した。
攻撃する回数は大分のほうが多いのだが、シュートに至る前に徳島に潰される繰り返し。逆に徳島は少ないチャンスを脅威に結びつける。80分にはアンデルソンの浮き球にまたもバルセロスが抜け出し迫力のシュートを放つが、濵田が立ちはだかって跳ね返した。
徳島は81分、エウシーニョを柳澤亘へ、高木を高田颯也へと両WBを交代。83分には大分が野嶽を松尾勇佑に、デルランを藤原優大にチェンジして、𠮷田が右CBに下がり松尾が右WBに、藤原が3バックのセンターに入りペレイラが左CBへと移った。
2点を追う大分はなおも追撃を続けるが、小酒井のクロスは跳ね返され池田の浮き球はラインを割った。ペレイラのパスは屋敷に合わず、松尾のクロスも薩川のクロスもシュートには繋がらない。この日はいつも以上にポカリスエットスタジアム鳴門を風が強く巻き、細やかな攻撃は精度が削られるようだった。

スクランブル登板のGK廉、役割を完遂
90分、玄のスルーパスにまたも抜け出したバルセロス。完全に失点する流れだったところを、濵田が果敢に止めに飛び出した。これにより失点は防げたがDOGSO判定となり、濵田は一発退場に。大分はすでに5枚の交代カードを切っていたため、片野坂監督は急遽、池田をGKに指名して細かく指示を送った。
アディショナルタイムは4分。まず池田のGKとしての仕事は、相手FKに対して入念に壁を作るところからだった。池田を除く全員で作った壁を越えたアンデルソンのキックを、キャッチこそ出来なかったものの池田は弾く。続く左CKはショートで児玉のクロスに合わせた鹿沼のヘディングはディフレクションあって枠の左へ。さらなるCKは全員でしっかり跳ね返して、池田も加わってボールを動かしながら、バルセロスの至近距離からのシュートに対してはペレイラと小酒井が体を張った。結果、それ以上の失点はせず、しかし幾多のチャンスを得点に結びつけることも出来ずに、試合には2-0で敗戦。後半戦のスタートは今季初の連敗となった。
ただ、これまでとは明らかに異なる戦いぶりを示したチーム。まだ細部を整えていかなくてはならないが、後半戦の反撃に向けて、ひとつの姿勢を表明したようにも見えた。これまでの「いい守備からいい攻撃へ」というスタイルも選択肢として持ちながら、天皇杯・札幌戦や今節のようなポゼッションスタイルも高めていくのか。まずはタイトな3連戦のダメージから回復し、次節・大宮戦への準備を見守りたい。

