急造最終ラインの皺寄せも。グレイソン初登場で劇的変化も複数の決定機逸で敗れる

急造3バックに対応した攻守で挑むも、時間とともに相手の対応や蓄積する疲労に苦しむ。新加入のグレイソン投入で攻撃に新機軸が生まれたが、複数の決定機を仕留めきれず、ダービー連敗という厳しい結果を突きつけられた。
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急造3バックでシンプルに臨む
ペレイラの出場停止の他にもDFにコンディション不良者が相次いだ今節、チームは急造の3バックで臨むことを余儀なくされた。最終的に指揮官が選んだのはデルランを中央に据えて鳥栖の1トップ・山田寛人に対峙させ、野嶽惇也と香川勇気が相手シャドーを見ながらデルランのカバーに回るという方法だった。前に強いデルランはエースを潰してくれる反面、釣り出されがちなところをどう埋めるかを香川は野嶽と話し合っていたようだ。藤原優大が負傷から復帰したことで復活していたラインコントロールも、今節はある程度は諦めざるを得なかった。
試合開始からしばらくはいつものようにミドルブロックを構えながら鳥栖のパスワークを制限し、特に相手のストロングである左サイドに自由に配球させないよう注意深く守れていた。だが、デルランもラインを高く維持しようと頑張ってはいたものの、やはり不慣れで布陣が間延びする瞬間が多くなる。すぐに帰陣してブロックを整えるのだが、次第に相手に対応され、また疲労も重なって、相手に上回られる場面が増えていった。

攻撃の形が作れかけてはいるのだが…
9分、宇津元伸弥の右CKのデザインプレーから茂平が詰めるがシュートは打たせてもらえない。13分には左に流れた山田にボールを収められたところから新井晴樹にエリア内まで運ばれシュートされる。ここはムン・キョンゴンが弾いたが、16分の新井とヴィキンタス・スリヴカのコンビネーションに対峙していた茂と野嶽が突破を許し、エリア内に進入した新井を茂が倒したと判定されPKに。山田がムンの逆を突いて沈め、18分、鳥栖が先制に成功した。
リードした鳥栖がやや積極性を損なう中で、20分台には香川が2本、野嶽が1本クロスを送る形も作るがいずれも相手にクリアされる。ミラーゲームでの力関係を厳しいと見た片野坂知宏監督は攻撃時に有馬幸太郎を前線に上げる可変システムに変更したか。29分には天笠泰輝のフィードを伊佐耕平が落とし、野村直輝が縦に差し込んで有馬が叩いたところから中川寛斗が狙える形も作ったが、相手の寄せも早くシュートを打たせてはもらえなかった。
30分には相手のクサビからの山田の落としを香川が収めたところからボールを握っての攻撃がはじまる。31分、タイミングを見計らって香川が差し込んだクサビを伊佐が落として野村が左に展開し、宇津元がグラウンダークロス。だが、これも味方に通ることはなく相手に掻き出されてしまう。

好機の数では上回るもシュートに至らず
32分には有馬のシュートが相手にブロックされ、天笠のミドルシュートが枠の右に逸れる。もどかしい時間が続いていた38分、左CKから同点に追いつく。宇津元の放った弾道はゴール前の密集を越えてファーでフリーになっていた野村に折り返され、混戦の中でデルランが左足アウトサイドで押し込むかたちで4試合ぶりの得点へと結実した。
スコアを振り出しに戻してスタートした後半。48分、伊佐の浮き球に有馬が抜け出すが小川大空に対応される。52分にはデルランのフィードを収めた茂が個人技で相手を剥がしクロス。きわどいところで泉森涼太に掻き出された。攻撃の形は出来ているのだが、最後の精度やパワーが足りず、得点の匂いはなかなか立ちのぼらない。鳥栖は54分、西川潤の右CKをファーで小川が折り返し森下怜哉がヘディングで狙うが枠の左。そういうシーンもありつつ、好機構築数は大分のほうが上回っているような状況で、片野坂監督は55分、中川を脳震盪から復帰した榊原彗悟に、伊佐を初出場のグレイソンに2枚替えした。
早速グレイソンがターゲットとなった空中戦でファウルを受け57分、FKをゲット。宇津元のキックがゴール前で巻いたところに有馬が飛び込んだがわずかに合わず。

グレイソンの存在感に希望が見える
鳥栖は57分、山田を新川志音、松本凪生を西澤健太に2枚替えして、新川と西川の2トップ、スリヴカと西澤の2シャドーに櫻井辰徳をアンカーとした3-5-2へとシステムを変更した。
58分、左サイドの競り合いの中からグレイソンがボールを収め、強度満点のドリブルで相手2人を置き去りにすると中央で構えていた有馬に託し、有馬が右へと展開。駆け上がった茂のクロスに有馬が飛び込んで頭で合わせる。シュートはわずかに枠の左へと逸れたが、迫力あふれる一連の攻撃だった。
グレイソンの存在感に希望が見えた瞬間、だが、鳥栖に2点目を奪われる。左に開いて小川のパスを受けたスリヴカから西川のスルーパスに新井が抜け出しクロス。相手のシステム変更にまだ対応できていなかったのか。そこまでの流れで球際に圧をかけることが出来なかった大分は、クロス対応でもデルランがボールウォッチャーになり香川が追いつけないまま、新川にフリーでヘディングシュートを許してしまった。
再びビハインドとなった大分は、野村をトップ下に配置し、有馬を前線に上げた2トップでグレイソンを軸に追撃を続ける。61分、野嶽のグレイソンへのフィードは相手にクリアされたがそのこぼれ球を野村が拾って左へ展開。宇津元のクロスに有馬が跳んだが相手に跳ね返され、茂の折り返しも掻き出された。

複数の決定機をものに出来ないまま終戦
65分にはスリヴカからボールを奪った榊原のクサビを野村が叩きグレイソンが左に展開。駆け上がってきた宇津元はその勢いのままに運んで自らシュートを放ったが、泉森に押さえられた。
77分、大分は茂と宇津元の両サイドを松尾勇佑と薩川淳貴にチェンジ。同時に鳥栖も櫻井と西川を西矢健人と鈴木大馳に2枚替えする。
80分には鈴木に抜け出されるが野嶽がエリア内で対応してホイッスルはなし。82分、ムンのフィードを薩川が落として有馬がクロスを送り、グレイソンにわずかに合わず。82分には天笠のグレイソンへのクロスがクリアされた。82分には右サイドの崩しから榊原のクロスに有馬が飛び込むが相手との競り合いとなり打たせてもらえず。84分、香川のクロスを松尾が競り、こぼれ球に有馬が入るがシュートは打てない。
86分、鳥栖は長澤シヴァタファリを今津佑太に代え、井上太聖が右WBに、今津が最終ラインに。同時に大分も野村を池田廉にチェンジした。1点を追う大分と、両WBをやや低めに構えさせて大分の追撃に備える鳥栖。薩川も積極的にクロスを送るが89分にはグレイソンに届かず、89+3分には泉森にキャッチされる。
90+6分にはベンチに下がった山田にイエローカードが提示される一幕もありながら、白熱する終盤。アディショナルタイムも尽きかけ、これがラストプレーという90+7分。香川が渾身でゴール前へと送ったフィードをグレイソンがスペースに落とし、駆け込んで押し込めば同点という状況で、デルランと薩川が味方同士でカブってしまい、最後のチャンスも逃した。
好機は築きながら得点が遠い。アウェイでの九州ダービー2連戦を連敗で終え、6戦未勝利の閉塞感が立ち込める。その中でグレイソンがもたらした新機軸が、今後へと一筋の光明をもたらした一戦だった。