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試合レポート

残留争い直接対決で、13試合ぶりの白星。チームの前進がようやく+3に繋がった

 

勝点5差で追ってくる18位の山口との直接対決。残留争いの今後を占うビッグマッチで、チームは13試合ぶりの白星を掴み取った。

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前任者への思いがほとばしった監督会見

実に3ヶ月と20日ぶりの勝利。竹中穣監督体制としては4戦目にして掴んだ初白星だった。試合後の監督会見で、指揮官は思わず声を詰まらせた。
 
「勝利は5月31日の甲府戦以来。その間に、カタさん(片野坂知宏前監督)が契約を解除になり、チームとして大きな変化がありました。わたし自身はカタさんに連れてきていただいた人間なのですが、本当にこのチーム、カタさんの助けになることが出来なかったという後悔の念、そういう思いを持っていました。その中でクラブがわたしに監督という重責を与えてくださったので、メンタル的には切り替えをしてきましたが、やはりこの13試合、プレシーズンからずっと一緒に戦った仲間がチームを離れたということが、自分にとってはいちばん難しいことだった。仲間の思いも一緒に持ちながら戦うというところで、選手は変化をもたらしてくれているし、彼らのコメントでもカタさんへの思いを聞いています。みんなでこのトリニータを何とかしたいという思いを持ちながら、今日まず1勝できたことに、安堵の気持ちでいっぱいでいます。すみません、長くなりました」
 
J2残留圏としてはギリギリの17位で、J3降格圏最上位である18位の山口とは勝点5差。この直接対決に勝利すれば降格圏との勝点差を8に広げ、残留争いを少なからず優位な状況に持ち込むことが出来る。逆にこの試合で敗れれば勝点差は2に縮まり、降格圏への転落も見えてきそうな、ヒリヒリしたシチュエーションで迎えた決戦だった。

 

立ち上がりから勢いよくゴールに迫る

第21節から中山元気監督体制へとシフトした山口は、伸びやかさを取り戻して戦っている。システムも3-5-2に変更し、2トップ2シャドーが相手守備網を侵食しながらゴールに迫るスタイルが定着してきた。上位チームとの対戦でもむしろ内容的に圧倒しながらなかなか勝利にはたどり着けずにいたが、前節の千葉戦で13試合ぶりの劇的勝利を収め、今節は今季初の連勝で一気に降格圏脱出を狙っている。
 
そんな相手との対戦に向け、練習後に榊原彗悟は「山口は前節、千葉に勝って勢いがあると思うが、この直接対決で、その勢いを自分たちが上回らないと絶対勝てない」と話していたが、試合はまさにその言葉どおりの立ち上がりになった。
 
山口がストロングポイントとしている2トップ2シャドーの攻撃に対しては、バイタルエリアの守備が重要になる。大分は5-4-1のミドルブロックを構え、相手のパスコースを牽制しながら相手の縦パスに対して網を張ると、奪った瞬間に相手を上回る勢いでゴールを目指す姿勢を見せた。6分、こぼれ球を拾った天笠泰輝のミドルシュートは枠の左。8分に岡本拓也、𠮷田真那斗、榊原、天笠、ペレイラと縦方向に繋いだフィニッシュのグレイソンのシュートも枠の左へ。

 

グレイソンPK弾で先制後も好守から主導権

その姿勢は早々に得点へと結実した。9分、自陣で𠮷田と協力してボールを奪ったペレイラのパスをグレイソンが収めて粘る中で、そのこぼれ球に詰めた榊原と野嶽惇也が勢いよくカウンターを繰り出す。池田廉、グレイソン、天笠も加わって5人で攻め上がる中、榊原が池田への選択肢も匂わせながらエリア内へとスルーパスを送ると、抜け出した野嶽が相手に倒されてPKを獲得。キッカーを務めたグレイソンが落ち着きながらも迫力を持ってゴール左上へと沈め、11分、大分が先制に成功した。
 
フィールドプレーヤーが距離感よく立ち回る大分は、セカンドボールの回収率も高く攻撃へと切り替える。26分には相手のサイドチェンジを三竿雄斗がカットし、池田、榊原が繋いでペレイラが持ち上がり、相手に阻まれたこぼれ球をグレイソンがシュート。チェ・ヒョンチャンの好セーブに防がれたが、迫力あふれる場面が続いた。
 
大分の守備を前に、なかなか2トップ2シャドーにボールを入れられない山口。左サイドからの攻略を図り、30分には岡庭愁人のクロスから有田稜がヘディングで狙ったが枠の右へと逸れた。
 
31分にはバックパスを受けようとする三沢直人へとダブルアプローチをかけた野嶽がボールを奪って持ち上がり、ペナルティーエリア手前でグレイソンへのスイッチを狙ったが、素早い相手の帰陣に阻まれる。32分には三竿の右CKに合わせた岡本のヘディングシュートが枠の左へ。36分には野嶽のパスを受けたペレイラのシュートがチェ・ヒョンチャンに掻き出されて枠の上。37分には三竿の右CKを𠮷田が逸らし、デルランのヘディングシュートがブロックされるたこぼれ球を池田がヒールで流し込みにかかるが、これもギリギリで磯谷駿に掻き出される。

 

なかなか追加点取れずも流れは優勢

左サイドを起点に攻め手を探る山口だが、𠮷田やペレイラ、天笠らの好守に阻まれてなかなかチャンスに至らない。45+3分には三沢のFKから有田がヘディングシュートするが濵田太郎がセーブし、大分は危なげのない1点リードで試合を折り返した。
 
50分には岡庭のクロスに合わせて河野孝汰がヘディングシュートを放つが枠の右。52分には相手の浮き球パスをカットした天笠が持ち上がり、その右への展開を受けた𠮷田が右足を振り抜いてチェ・ヒョンチャンに阻まれた。
 
54分、竹中監督はイエローカードをもらっている池田に代えて伊佐耕平を投入し、伊佐はそのまま左シャドーへ。フレッシュな伊佐が攻守に強度を醸し、山口の攻撃機会を削った。59分には三竿が相手の隙を逃さずセカンドボールをクサビへと変え、グレイソンが粘ってサイドチェンジ。𠮷田を経由してペレイラがクロスを送り榊原が頭で合わせたが、枠は捉えきれない。
 
山口は60分に三沢がミドルシュートを放ったが枠上へ。63分、チェ・ヒョンチャンの位置を見定めて榊原が狙ったロングシュートは枠の右へ。

 

徐々に高めた守備意識。最後まで集中切らさず

山口は65分、有田を古川大悟に、三沢を西堂久俊に2枚替え。68分には大分が天笠とグレイソンを小酒井新大と野村直輝に交代した。7月26日に内側側副靱帯を損傷し急ピッチでリハビリに取り組んで早めの復帰を遂げた野村が野嶽とダブルボランチを組み、伊佐が頂点に移って、榊原と小酒井の2シャドーの形となる。
 
70分には山本桜大のシュートを野嶽がブロック。71分、山口は山本桜大に代えて小林成豪。73分には西堂のFKを濵田が処理し、74分には小林のシュートを野村がブロック。野寄和哉のクロスを三竿が、岡庭のクロスをペレイラが掻き出し、選手交代も交えての山口の追撃にも大分の守備は集中を切らさない。
 
77分、山口は野寄に代えて成岡輝瑠、河野に代えて宮吉拓実。85分には大分が、𠮷田を茂平、三竿を宇津元伸弥に交代して、せめぎ合いは終盤へと突入する。89分、西堂のシュートは枠上に逸れ、90+3分には成岡のシュートが小酒井に、続いて岡庭のシュートが野嶽にブロックされた。90+4分、岡庭の左CKは茂がクリア。6分のアディショナルタイムに突入してからは喜岡佳太が前線に入るパワープレー、CK時にはチェ・ヒョンチャンも攻撃参加して追撃する山口だが、試合の流れの中で徐々に守備意識を高めた大分は崩れない。最後にペナルティーエリア手前で山口がFKを獲得し、これが決まれば引き分けというこの試合最大の山場が訪れるが、宮吉のキックは壁に当たってクリアされ、そこで長いホイッスル。多くの決定機を追加点には結びつけられなかったものの、大分はついに起死回生の勝利を収めた。今節は山口の連勝を阻んで勢いを断ち、まだ続く残留争いを生き抜くために、次節もホームで、最下位の愛媛を叩きたい。