得点には至らず。他力ながら、これまでの積み重ねもあり残留確定

守備意識高く入った試合で集中して要所を抑えてはいたが、セットプレーで失点。展開の中で優勢な時間も迎えたが、得点には至らず黒星に。1時間遅れの試合で山口が勝点1止まりとなったことで、大分のJ2残留が確定した。
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今節もアクシデント含みの急造布陣に
本当ならば試合に勝って、最低でも引き分けてJ2残留を決めた上でホーム最終戦セレモニーに入りたかったところだが、残念ながら、勝点3差で自動昇格圏入りを狙う千葉の力を上回ることが出来なかった。
上手くいかないシーズンにありがちな話だが、今季は組織が上手くハマりはじめたタイミングでその核となる選手が負傷離脱するケースが相次いだ。大友仁ストレングスコーチの加入もあり負傷からの復帰のスムーズさには大きな改善が見られたが、チームの戦績が出ない中で負荷が大きくなる部分もあるのか、離脱と復帰でメンバーが頻繁に入れ替わることが多かった。それがシーズン最終盤まで続いている。中盤の距離感キープに貢献していた池田廉が、自ら得点した札幌戦後に別メニューに。ここ数試合で存在感を発揮していた他の選手たちの複数名も、全体練習を回避していた。
今節はデルランも出場停止で、三竿雄斗が一列下がり、左WBには薩川淳貴が入ることになった。複数のメンバーが代わる中で復帰に期待されたのが中川寛斗だ。第28節・磐田戦で布陣を完璧にオーガナイズしたあと負傷離脱していたが、ようやく戦列に戻れる目処が立ち、コンディション100%とは言い難い中でも、千葉戦先発予定で準備を進めていた。その中川が試合前々日に再離脱。急遽、脳震盪から復帰して間もない榊原彗悟が先発することになった。中川と榊原では特長が異なるため、榊原の長所を生かすかたちで戦えるよう、このアクシデントに対応したかたちだった。

パワーを出してくる千葉に集中して立ち向かう
絶対に勝利が欲しい千葉は立ち上がりから勢いを醸してきた。もとより個々のクオリティーの高いプレーヤーが揃っており、チーム戦術としても多彩な攻撃を繰り出せる成熟度を誇る。そんな千葉を、竹中穣監督が「引かずに戦う」と宣言したとおり、大分も積極性の高い戦法で迎え撃った。今節、1トップには鮎川峻、左シャドーには伊佐耕平が入り、前線から激しくプレスをかけながら千葉の攻撃に制限をかけていく。
千葉の攻撃の最大のストロングポイントであるサイドのアタッカーに対しては、しっかりと体を張った。長いボールにも岡本拓也やムン・キョンゴンが落ち着いて対応。ただ、ボールを奪ってから攻め返そうとしても、千葉の守備への切り替えが早く、高強度のプレスで大分の特長を効率よく封じてくるため、攻撃精度を欠いてなかなか決定機にまで至らない。榊原がデュエルに勝利してカウンターを試みるが、組織として連係する以前に相手に潰される場面も続いた。
ほぼ攻められる展開を、それでも集中してしのげていたのだが、20分、今節もセットプレーから失点。田口泰士の左CKに合わせたエドゥアルドのヘディングシュートはクロスバーを叩き、そのこぼれ球を河野貴志に押し込まれてしまった。

後半は構えた千葉を攻略する構図に
前半は自分たちの倍の8本のシュートを打たれたものの追加点は奪われずに折り返すと、後半は負傷した𠮷田真那斗を松尾勇佑に代えてスタート。さらに50分には、前半の相手との接触で足を痛めていた三竿がプレー続行不可能となり、戸根一誓と交代するアクシデントにも見舞われた。
だが、千葉の意識がリードを守る方向へと傾き、矛を収めて自陣を固める戦法へと変化。右サイドで松尾が本領発揮してペレイラとのコンビネーションもよく攻略しはじめると、左では戸根が得意の足技を交えながら突破口を探る。65分には小林慶行監督が3枚替え。カルリーニョス・ジュニオ、椿直起、エドゥアルドをベンチに下げ、森海渡、杉山直宏、前貴之を送り込むと、杉山が右SHに入りイサカ・ゼインが左に移った。
68分には竹中監督が2枚替え。鮎川と薩川を野村直輝と宇津元伸弥に代え、伊佐が頂点に、野村が左シャドーに入る。千葉とのミスマッチを巧みに使い、野村が多く起点を作りながら両サイドから攻略していった。

迫力ある追撃も得点には繋がらず
76分には千葉が足をつらせた日高大に代えて品田愛斗。品田がボランチに入り前が左SBに移る。サイドからクロスの供給が増えてきた大分は77分、伊佐に代えてグレイソンを投入する。野村のグレイソンへのパスを鈴木大輔に掻き出されるなど、迫力ある追撃を続ける中で、83分にはグレイソンが若原智哉に圧をかけたところから宇津元が高い位置でボールを奪い、野村から再び受けると右足を振り抜いてCKを獲得するなどチャンスも多く築く。
だが、セットプレーのチャンスでも仕留めることは出来ず、90+1分には田口を鳥海晃司に代えて5バックで守備を固めた千葉に逃げ切られる結末に。千葉陣地でプレーするようになった時間帯、なんとかチャンスをひとつでもものにして追いつきたかったのだが、遂げることは出来ずにタイムアップを迎えた。

1時間後、山口の試合結果をもって残留確定
今節は自力で残留を勝ち取れなかったため、山口のいわき戦の結果を待つ状態でのホーム最終戦セレモニーとなったのが残念だった。セレモニー終了後、竹中監督の試合後会見を終え、ミックスゾーンで天笠泰輝が囲み取材を受けている最中に、山口といわきが0-0で試合終了となり、大分のJ2残留が確定した。
苦しいシーズン、残りは1試合。その相手である水戸は今節、長崎との直接対決に敗れて首位の座を明け渡した。大宮が徳島に敗れたため単独3位となった千葉に勝点1差へと詰め寄られ、最終節の水戸はホームで初優勝・初昇格を懸けて火の玉となってくるだろう。今節の敗戦は、そういう状況にも繋がってしまった。
ただ、今節の戦いぶりからは好感触も得られた。なにより欲しかった結果が伴わなかったことは残念で、チームとしてもクラブとしても足りなかったものを突きつけられるものにはなったが、急造布陣ながら短い時間で対千葉戦術を共有して戦った様子が、ピッチの外からも窺えた。このチームに残されたあと1戦を、せめて少しでもいいものに出来るよう、最後の準備に邁進したい。



