迷子になった愛犬を探しに走った爆速アタッカー。再会の歓喜と感謝を「プレーで返す」
新型コロナウイルス感染症対策を受けてJリーグが中断期間に入った2月26日、この数日間を激動状態で過ごした松本怜が取材に応じた。
松本の愛犬チェルの存在は、トリニータサポーターの間ではよく知られた存在。松本の愛称「レイチェル」から名前を取り、独身時代からともに暮らしてきた家族だ。イケメンながら独身を貫く松本に対し「チェルがいるから結婚しなくてもいいと思っているのでは…」と、実家のご両親も含め周囲が心配するほどの溺愛ぶりだった。
その松本がめでたく結婚し、父となった現在も、チェルは変わらず一緒に暮らしている。「なんなら向こうのほうに懐いている気がする…」と奥様とチェルの間柄に微妙に嫉妬するくらい、仲睦まじい一家だ。
その松本家に激震が走ったのが、2月23日未明。松本が22日にJ1第1節・アウェイC大阪戦を戦って、大分へと戻ってきたときだった。年末年始に帰省したときから実家に預けていたチェルが行方不明になったというのだ。実は夕方から姿が見えなくなっていたのだが、松本のご両親が「チームに迷惑をかけてはいけない」と伝えずにいたという。「試合が終わったら連絡して」と言われていた松本は、大分に帰ってからそれを知ることになった。
ツイッターを通じてチェルが行方不明になったことを明かし、情報提供を呼びかけたのが、日付が変わったばかりの0時24分。サポーターがまっさきに反応し、クラブ関係者やメディア関係者も次々にリツイート。情報拡散活動は他クラブのサポーターにも広がり、北海道コンサドーレ札幌サポーターの方々や北海道に知り合いのいる人たちが協力を呼びかけたり、中には手製のチラシを配ってくれる人が現れたりもした。
その動きが全国レベルのニュース記事にも取り上げられ、最初に松本が呼びかけたツイートは、「すわ、他人事ではない」とばかりに腕まくりした人たちにより公式RT数3万4500超。引用RTを含めればさらなる数となる。松本が新たに開設したインスタグラムの投稿にも2000を超える「いいね！」が寄せられ、シェアもされて、捜索の輪は瞬く間に広がった。
本谷健太主務に連絡を入れ、夜が明けてすぐに実家へと帰った松本。北海道の冬の夜は厳しい。天候も悪くチェルの安否が気遣われる中、眠れずにひたすらチェルを探し続けた。
吉報が届いたのは24日12時50分。ご近所の方の目撃情報を頼りに走っていったら発見できたという。50m走5.8秒のスピードスターは、このとき人生最速記録をマークしたのではないかばかりの勢いだった（憶測）。
見つかった報告のインスタグラムに涙した人も多かっただろう。無精髭姿の松本が笑顔でチェルを抱きしめる写真への「いいね！」数は4000近くに上り、SNSのあちこちで喜びの声が上がった。
すぐに大分に戻ってチームに合流した松本は、まっさきに片野坂知宏監督に謝罪と御礼の報告。指揮官も「無事に見つかってよかった」と喜んでくれたという。
練習後に取材に応じた松本は「まさか全国ニュースになるとは思わなかった。個人的なことで世間を騒がせて申し訳なかった。でも見つかったのは本当にみなさんのおかげ。もし見つかってなかったらサッカーどころではなくなっていた」と、まだ疲れの抜けない様子のまま安堵の表情を見せた。
チェルが見つかった翌日には、32歳の誕生日を迎えた松本。「年齢を重ねたからこそ、より成長していきたい。この御礼はプレーで返す」と決意を述べ、シーズンの中断期間にチームの力を高めたいと語る。
今季ここまでの2試合では、相手を押し込みクロスを多く供給しながらまだ無得点。今後は松本たちクロッサーと中に入る選手たちの意思疎通や、フィニッシュのバリエーション増が求められる。家族の固い絆を再確認してパワーアップしたサイドアタッカーに、ますますの活躍を期待したい。
この一連の出来事については今週の「トリテンTV」でもお届け。松本からファン、サポーターの方々へのメッセージも収録しているので、そちらも是非チェックしてください。
