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試合レポート

全員が連動した3-5-2システムで6試合ぶり勝利。課題は“トドメ”

 

明治安田J2第26節A岐阜戦には、特に守備面での狙いに軸足を置いた3-5-2システムで臨んだ。ピッチ内での柔軟な修正で特に前半は出色の内容。三平和司の先制点も流れを引き寄せた。

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守備面を徹底して3-5-2で臨む

 
台風の進路予報とにらめっこしながら、チームは予定を急遽変更して新幹線で敵地へと向かった。3連戦の3戦目、疲労も心配されたが、それほど影響はなかったようだ。台風も上陸はしたものの、雨風ともに大事には至らず、試合前に何度かスコールのような雨が降った程度。むしろ試合前日よりもやや涼しいくらいだった。
 
片野坂知宏監督はこれまで、大木武監督率いる岐阜に対し、4枚のブロックを構えて守備から入る戦い方を選択し、成果を上げてきた。だが今節、連戦中の短い準備期間に浸透させたのは、3-5-2での対岐阜戦術。岐阜のスピーディーで流動的な攻撃をブロックでしのぎつつ、中盤のプレスをかいくぐってカウンターを狙う意図はこれまでと同様だが、ここ最近、得点力不足に陥り5戦勝ちなしのチーム状況も鑑み、コンディションのいい選手を起用してのフォーメーションだったと思われる。
 
トリプルボランチなると駆り出される小手川宏基と、前節から引き続きの先発となる前田凌佑、アンカーには丸谷拓也を並べ、中盤の対応に備えた。2トップにはボールの収まりのいい三平和司と伊佐耕平を配置してカウンターを狙う。
 

前半の修正が奏功して有利な展開に

 
当初の狙いではもっと構える色合いが濃いはずだった。岐阜にボールを回されながら後ろに重くならなければいいがと懸念していたが、立ち上がりにややその傾向が見られたあと、チームは即座に修正。積極的に球際に出ながら、細やかにスライドして重心を高く保つようになった。ゼロトップ気味に下りるデ・フリースや両サイドから中央に入ってくる古橋亨悟と山岸祐也に対しては鈴木義宜を中心に激しく体を寄せ、サイドからの攻め上がりもボールサイドのWBがケアした。
 
岐阜は今節、中盤のメンバーを変えていたが、その一枚が最終ラインに落ちたところへ三平と伊佐がプレスをかけて攻め上がりを防ぐと、岐阜の縦パスが入ったところで丸谷、小手川、前田が最終ラインと連係しながら奪いきり、即座に切り替えてその背後を突きながら攻め返した。
 
先制は19分。フィードに抜け出した星雄次がライン際で粘り、前田を経由して丸谷へ。丸谷のミドルシュートは絶妙なタイミングで抜け出した三平が左足でトラップし、あらためてシュート。ひさびさの先制点がチームに勇気をもらたした。
 
さらに30分、相手がハンドしエリア右でのFKをゲット。ライン上でのハンドでPKではないかとも思われたが、小手川のFKは中央の密集状態で相手に当たってオウンゴールを誘う。前半で2点のリードを奪った。
 

後半は相手が変更も最後まで集中切らさず

 
後半、岐阜はデ・フリースを下げて長沼洋一を入れ、長沼を右WB、福村を左WBに置いて、頂点には山岸と古橋を並べた3-5-2へとシステムを変更する。決定的な仕事をこなす古橋が最前線に来たことや、三平と伊佐が縦関係を築いてプレスの掛かり方が変わったこと、疲労の影響などもあって、後半は岐阜にボールを持たれる時間が長くなった。
 
シュートも打たれたが、高木駿の安定したセーブもあり決定的な場面は作らせず。構えて守りながらカウンターで幾度も好機を築いたが、岐阜の好守に遭い、追加点を奪えない。
 
73分には両チームが二枚替え。大分が2トップを藤本憲明と後藤優介に替えてカウンターでの追加点を狙いにいくと、岐阜は山岸と中島賢星を下げて難波宏明と風間宏矢を入れギアを上げる。互いにチャンスを増やしながら精度不足や集中した守備によりゴールを奪えず奪われず。89分に小手川に代えて入った馬場賢治も献身的に役割を果たし、0-2のまま試合終了を迎えた。
 
長いトンネルを抜ける6試合ぶりの勝利だ。立ち上がりに三島頌平のスルーパスに抜け出したデ・フリースが高木との1対1で枠をとらえきれなかったのをはじめ、前田や小手川も体を張って先制点を与えなかったことも、流れを引き寄せることにつながった。片野坂監督は試合後、「全員がよく役割をやりきってくれた」と選手たちを讃え、「試合を決める3点目が奪えなかったこと」を今後の課題に挙げた。
 
引いた相手を崩せないストレスフルな試合が続いていた中で、ひさしぶりにスペースを使える相手。らしさの発揮しやすい展開でもあったが、とにかく勝点3を積めたことを励みに、ここからを戦い続けたい。