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試合レポート

勝負どころで怒涛の新戦力投入。流れは引き寄せるも再び王者の対応に阻まれる

 

ゲームプランは周到だったが、肝心の得点に至らず勝点は0に終わった。新戦力たちの躍動に今後への期待は膨らみつつも、今節は下位チームが軒並み勝点を積んでおり、状況は厳しくなった。

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翻弄されつつ粘りに行くも立ち上がりに失点

なんとか失点せずに勝負どころが来るときまで粘りたかった。強固な相手CBを避けて起点を作る狙いもあったのか長沢駿が右に流れて位置取り、機動力に長けた野村直輝と渡邉新太が激しいハイプレスで相手を制限しようと前線を駆けずり回った。
 
ただ、巧みでスピーディーな相手のパスワークに翻弄され、あらゆる局面で少しずつ後追いになっていく。システムの噛み合わせの相性も悪く、両WBが川崎Fの両WGに引っ張られてなかなか高い位置を取れないため、前線に守備の負担が大きくかかった。相手SBがフリーになる場面が多く、危険を感じていた矢先の10分に、山根視来の縦パスからレアンドロ・ダミアンのワンタッチシュートであまりにもあっさり失点。寄せきれず、弾ききれずでもったいない立ち上がりとなった。
 
川崎Fはその後も好機を量産する。27分にレアンドロ・ダミアンが負傷して知念慶と交代すると、30分にはその知念がゴール前のこぼれ球に右足を振り抜いて枠の右。33分にはジェジエウからの浮き球パスを知念が胸トラップするところを、坂圭祐が激しい対応で阻んだ。35分には家長昭博が橘田健人のマイナスのクロスに合わせたが、枠を捉えきれず。
 
大分は、ボールを奪って前線につけても相手の厳しい寄せに遭い攻撃の形を作れない。大半の時間を耐えながら過ごした末に、ようやく前半の終盤に少しずつボールが持てるようになった。初めての決定機は40分。渡邉新太がゴール前へとボールを送ったが谷口彰悟に触られ、左サイドから走り込んでいた香川勇気にはわずかに届かない。44分には香川のクロスに長沢がダイビングヘッドしたが、枠の左に逸れる。

 

後半は盛り返すも再び相手の修正に遭う

ハーフタイムに攻守のポイントを整理した大分は、後半になるとボールを握って相手陣でプレーする時間帯を増やしたが、やはりジェジエウと谷口を中心とする堅固な守備に阻まれ、フィニッシュにまでは至れない。ただ、57分に登里享平のミドルシュート、60分に家長の仕掛けから脇坂泰斗の反転シュートと攻め返す川崎Fも、それがいずれも枠上に逸れ、次第に流れが悪くなる。
 
そこを勝負どころと見極めた片野坂知宏監督は64分、香川を梅崎司に、渡邉を町田也真人に、長谷川雄志を下田北斗にと一挙3枚替えでギアアップを図った。狙いはハマり、梅崎や町田のアグレッシブな仕掛けと下田の積極的なゲームメイクで、大分はぐっと流れを引き寄せる。さらに72分には野村に代えて増山朝陽を投入し、システムを3-5-2にしてたたみ掛けた。こうなるとここまで1失点で耐えていたことが大きく感じられるようになる。
 
だが、川崎Fもそこから修正を施した。75分、脇坂、ジョアン・シミッチ、長谷川竜也を遠野大弥、車屋紳太郎、宮城天に3枚替えし、谷口を一列上げてシステムを4-2-3-1に変更した。2列目は右から遠野、家長、宮城の並びとなる。序盤から守備時には4-4のブロックを組んでいたのだが、切り替えの早くなった大分に対するスペースをケアするとともに、前がかりになった大分の空けたスペースを使うという攻守両面での意図があったようだ。ここから、トップ下に入った家長が圧巻のゲームメイクを見せるようになる。
 
そして77分。宮城の仕掛けに坂が対応しているところへすかさずサポートに入った登里がグラウンダーの速い折り返し。エンリケの背後でカバーした三竿雄斗のクリアボールを再び登里が拾うと、今度はふわりとゴール前へ。最終ラインが右にスライドしていたとき、ゴール前に戻っていたのは梅崎のみで、1人で3人を見るという構図になっていた。その梅崎の背後から遠野に頭で押し込まれて追加点。流れを引き寄せようとしていただけに、非常に痛い失点だった。

 

交代策によるギアアップは奏功したが…

そこからの追撃も悪くはなかった。79分には長沢に代えて呉屋大翔を投入。中盤に下りている町田が運動量豊富に絡みながら左サイドで多く起点を作った。その中で81分にはジェジエウに突破を許しフィニッシュにまで持ち込まれるが、これにはポープ・ウィリアムが辛うじて対応する。
 
84分には増山と梅崎のポジションを入れ替え、システムは再び3-4-2-1に。推進力のある増山をWBに置き、連係の得意な梅崎をシャドーに配置することで、さらに攻撃は活性化。85分には下田のクサビを下がって受けた呉屋が小林裕紀に預け、追い越す坂に託すと坂は中盤でフリーになっていた町田へ。町田のゴール前へのクロスはわずかにオフサイドとなったが、ようやくカウンターが形になった場面だった。G大阪戦で押し込まれた状態からカウンターが発動せず「もっとチームで意思疎通を」と呉屋が話していたとおり、改善された様子が見て取れた。
 
87分には増山が得意の足技を披露してのボールキープ。相手3人を引きつけながら最終的にペナルティーエリア左前の絶妙な位置でファウルを受け、FKを獲得した。下田の繰り出した高精度の速い弾道は相手も寄せている中、ピンポイントでエンリケの頭に合ったが、シュートは惜しくも枠の左。
 
90分、川崎Fは谷口に代えて山村和也。しっかりと時間も使いながら守備のバランスと強度を保つ。92分にはボールを動かされた末に登里の縦パスに遠野が飛び込んだところをポープが対応して乗り越えつつ、井上が、梅崎がクロスを試みる。93分には下田がゴール前へとパスを通し、ジェジエウの死角から飛び出した町田が足を伸ばすがわずかに届かず。

 

力量も完成度も高い相手を越えていくには

4分のアディショナルタイムのラストプレーは川崎Fの左CKだった。2点のアドバンテージを得ていてなお3点目を狙い、大分のカウンターを防ぎに、全員がゴール前に上がる。結局、ショートコーナーを仕掛けたタイミングで長いホイッスルを迎えたが、さすが昨季王者は最後まで抜かりなく試合を運んだ。
 
個々の実現するクオリティーやスピードを含めたチームの完成度において、順位に表れているとおりの大きな差が感じられた試合だった。ただ、大分の現状としては、この試合の戦い方が最善策だったと言わざるを得ない。力量差のある相手とのマッチアップでは、どうしても疲労の度合が嵩む。プレー強度や判断の精度などを考えると、出来るだけ長く時間を稼ぎ、勝負どころで一気呵成に打って出ることも理にかなっており、新加入選手も加えそれぞれの特長も、そのプランによく当てはまっていたとは思う。
 
それでも肝心の得点には至らなかった。片野坂監督は試合後、「要所を上手く抑えられた」と唇を噛んだ。明確なスタイルを持つということは、相手にとって抑えるべき「要所」が絞りやすくなるということでもある。力量も完成度も高い相手との対戦でそこを越えていくには、これまでと同じことをしていては追いつけない。
 
そういう意味で、新加入のメンバーはこの試合でも新たな刺激をもたらしており、それによって既存戦力も活性化すれば、戦術オプションは増え精度も高まる。ただ、そのスピードが残留争いに間に合うか否か。今節、下位の他チームが軒並み勝点を積んだことで、19位・横浜FCには勝点差を2に詰められ、残留圏までは7に開いた。あくまでもリーグ戦であり、今節なにかが決定的になるわけではないが、状況はこれ以上、悪化させたくない。

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