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試合レポート

上位直接対決3連戦の1戦目は圧勝。成長の実感はさらなる高みへのステップ

 

電光石火で弓場、15年ぶりに梅崎、前節に続き足で長沢。立ち上がりから畳み掛けた大分は、すべて井上を起点に前半で3得点を挙げ、早々に試合の大勢を決めた。組織戦術を完遂できる一体感が、チームにいい風を吹かせている。

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開始30秒で将輝、15年ぶりの司

先制は開始30秒ほどだったか。右サイドでボールを持った井上健太は相手に縦のコースを切られると、中を見て長沢駿へと早めにボールを入れた。相手2人にサンドされながらそれを受けた長沢は、懐深く粘りながらサポートに走り込んできた弓場将輝へとボールを落とす。弓場の左足のコントロールショットは、相手守護神・笠原昂史の指先をすり抜けてゴールネットを揺らした。弓場は第37節・金沢戦以来、今季3得点目。
 
あまりに早い失点に長崎がショックを受ける間もなく、5分には2点目を挙げた。弓場のパスを受けた町田也真人がスペースへと井上を走らせると、井上は持ち前のスピードでえぐりマイナスのクロス。爆速の井上と中に入る長沢を追って後ろ向きになっていた長崎守備陣の背後から、走り込んできた梅崎司が勢いよく仕留めた。リーグ戦での梅崎のドームでの得点は2007年9月2日、J1第24節・甲府戦(4○1)以来15シーズンぶり(天皇杯・神楽しまね戦で大分復帰後初ゴール)。
 
早々に苦しい立場となった長崎だが、6月に就任したファビオ・カリーレ監督の下、構築中のポゼッションスタイルにチャレンジしようとボールをつなぐ姿勢を見せる。だが、大分の連動した守備に阻まれてほとんど何も出来ず、エジガル・ジュニオとクレイソンの2トップを軸に攻め返そうとするが、弓場や梅崎の長い帰陣での対応など、大分の素早いトランジションに阻まれてカウンターもフィニッシュにまでは持ち込めない。

 

3点目の2戦連続長沢弾も健太の突破から

その後も長崎に何もさせず、大分が実に多彩な攻撃の形を披露する前半となる。17分には長沢にクサビを入れた下田北斗が、長沢の落としを受けた梅崎の浮き球にゴール前まで抜け出すシーン。20分にはこぼれ球を拾った弓場からの展開を受けた高畑奎汰が勢いよく左足を振り抜いた。38分には下田の左CKから長沢がヘディングシュート。いずれも得点には至らなかったが、相手を見ながら自在に立ち位置と役割を変えて次の一手を繰り出すような大分の攻撃は、見ていて非常に面白かった。
 
40分には3点目。小出悠太から町田を経由してボールを受けた井上は、縦を切ってきた加藤聖を緩急の駆け引きで剥がして攻め上がり、さらにスライディングで阻みにきた白井陽貴にも奪われずに、もう一度マイナスのクロス。井上の突破に意識を取られていた長崎守備陣からふっと離れて長沢が左足で合わせると、シュートは笠原の右手に触られながら、ゴールへと吸い込まれる。長沢は今季8得点目。足では前節に続き2得点目となった。
 
いずれも井上からはじまった3得点。前節、負傷から復帰して劇的ゴールを仕留めた長沢も圧巻の存在感を見せた。今節は少し左寄りに立ち位置を取っていた梅崎のマルチぶりや町田の状況ごとの立ち位置と運動量、アンカーとしての役割を全うしながら自らの真骨頂も発揮した下田北斗ら、経験豊富なメンバーの黒子的な活躍も光る。後方で相手の2トップを抑えていた守備陣がそれらの攻撃を支えていたと言える。長崎は途中から統制が取れなくなったように後手に回りながらタックルで対応し、クレイソンは激しい被ファウルアピールでセットプレーの好機を得るなど、苦しい前半を過ごした。

 

修正した長崎にも間もなく対応

大分は高畑を増山朝陽に代えて後半をスタート。井上に手を焼いた長崎は、加藤聖を高橋峻希に代えシステムを4バックに変更。守備強度の高い選手を増やして井上に対応しつつ自陣では4-4のブロックを構え、ある程度割り切って2トップへとボールを入れる戦法へと切り替えてきた。
 
まだその変化を見極めようとしていた最中だったか。50分、長崎に1点を返される。大竹洋平がクサビを受け浮き球をつないで攻め込むと、最後はクレイソンがエジガルとのパス交換で突破を図る。大分守備陣もそれには対応したが、そのこぼれ球を米田隼也に拾われ、素早くゴール左隅へと流し込まれた。
 
56分には吉田舜の長沢へのフィードをカットされ、セカンドボールを拾ったクレイソンがゴール前でフリーになっていたエジガルへと託すが、エジガルのシュートは吉田がファインセーブで阻止。2点目を与えていれば流れは相手に傾いていたかもしれなかった。59分、足を痛めた弓場に代わりエドゥアルド・ネットがピッチに入る。
 
少し割り切った長崎に攻められる時間は増えたが、大分も間もなく4-4-2の長崎に順応。63分、梅崎のクロスに長沢が頭で合わせて枠の上。64分には個で打開して攻め上がった増山がフリーの町田にフィニッシュを託したが町田のダイレクトボレーは枠の左。65分にはまたも町田が井上を走らせ、井上のクロスを相手がカットしたこぼれ球を長沢が反転シュートで沈めようとして笠原にブロックされる。なかなかゴールは奪えないが、再び大分が圧倒する展開を取り戻した。

 

最後まで圧倒し直接対決その1で相手を蹴落とす

展開がオープンになってきた70分、下平隆宏監督は梅崎と長沢を金崎夢生とサムエルに2枚替え。2分後にはカリーレ監督もエジガルと大竹を植中朝日とクリスティアーノに代えた。
 
74分には下田のクサビを受けたサムエルが増山へとつなぎ、増山は相手をかわして右足を振り抜いたが、相手にブロックされた弾道は枠を外れる。76分には町田がボールを奪ってすかさず金崎に出したが、金崎の強引に放った左足シュートは笠原に対応された。
 
79分、長崎は二見宏志を下げ奥田晃也を投入し、米田を左SBに下げて布陣の攻撃色を増す。82分にはクレイソンを五月田星矢に交代。大分は下田が足を痛め、86分に野村直輝と交代する。
 
87分には増山のスローインからエドゥアルド・ネットが反転シュートを放つが笠原に防がれた。88分には加藤大がヒールで流し込もうとしたところを吉田が押さえて、両守護神もチームを助ける。シュートは1本にとどまったが金崎はボールの収まりどころとして前方に張っていたり守備に戻ったりと、そのときどきで的確な役割を果たしていた。
 
最後まで攻め合いながらアディショナルタイム5分が尽き、大分が3-1で勝利。勝点を63へと伸ばした。ここ数試合は一戦ごとにチームの戦いぶりに深みが増している手応えもありつつ、今節は山形が新潟に追いつかれ、熊本が秋田に、仙台が東京Vに、岡山が金沢にと敗れて、昇格争いのライバルたちが揃って転ける結果となった。今節の結果を持って次節には、新潟と横浜FCの自動昇格が決まる可能性がある。その状況で乗り込むニッパツ三ツ沢球技場。前節からの勢いをさらに大きなものとしていく、最高の舞台だ。

3起点の人(左)と各1得点のみなさん

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