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【PHOTO日記】日本代表MF清武弘嗣がトレーニングに参加。坂井大将らと交流する

 

帰国中の大分市出身MF・清武弘嗣が7月1日、古巣の練習に参加し軽く調整を行った。

このグラウンドでボールを蹴るのは2010年にC大阪へ移籍して以来となる。12年7月にドイツに渡り、1.FCニュルンベルクとハノーファー96でプレー。今夏からは舞台をリーガ・エスパニョーラに移し、セビージャFCのユニフォームに袖を通すことが決まっている。

清武が大分に在籍していた当時のチームメイトはすでに高松大樹のみとなっていたが、鳥カゴでは笑いを弾けさせる場面も。アカデミーの後輩たちとも言葉をかわしており、特に選手寮で1年をともにしブラジルW杯にも帯同した坂井大将とは、練習後もリフティング勝負するなどリラックスした雰囲気だった。



【インタビュー】日本代表MF 清武弘嗣(セビージャFC)「あの頃のことを忘れずに」

──今日、練習参加してみて。

選手も大幅に替わっているので少し緊張しましたが、一緒に練習できて良かったです。初心に返ることが出来ます。こういう場所を提供してくれた片さん(片野坂知宏監督)や、迎え入れてくれた選手のみなさんに感謝しています。

──ハノーファーではチームを牽引する役割を担い、また今季からはセビージャでプレーすることになりましたが、いまの思いは。

ハノーファーでは中心選手としてプレーできた大きな2年間を過ごしました。それが無駄にならないように、これからのサッカー人生を過ごしていかなくてはならないと思っています。また新しい環境になるし、自分にとってはステップアップと同時にチャレンジでもあります。結果を残さなくてはならないという気持ちがありますが、まずは気負い過ぎずやっていきたいです。

──大分を出ていろいろなチームでプレーし、ご自身で変わったと感じることは。

大分にいた頃はまだ若く、人としても大きくなかったと思いますが、移籍して違う環境に身を置くことでたくさんの人と出会ったし、また海外で暮らすことでたくさん学ぶことがありました。それを通じて少しは成長したかなと思います。これからまた新しい国に行くので、もっともっと成長できるようやっていきたいと思います。

──大銀ドームでのプロ初ゴール(2008年J1・清水戦)を覚えていますか。

覚えてますよ。あれからはじまったと思いますし、あの頃のことを忘れずに、これからも初心を大事にしていきたいです。

──A代表では西川周作選手、森重真人選手、金崎夢生選手と「大分カルテット」と呼ばれていますが。

ここ最近は4人一緒に選ばれていてうれしいことですし、いつも集まれば大分の話が出ます。みんな大分が大好きです。トリニータでやってこれた時間は、自分たちにとって貴重な時間だったと思います。

 

背番号28を継ぐ生え抜きの系譜・坂井大将

U-19代表の中国遠征中にも清武と連絡を取り合っていたという坂井大将。一緒に練習できたことを「全部楽しかった」と手放しで喜んだ。

清武が大分でつけた背番号28を受け継ぐ、アカデミーの後輩。同じファンタジスタ・タイプとしてその背を追いかける存在だ。練習後に肩を並べてジョグしながら、この日行った紅白戦についてのアドバイスを受けたと言う。

「見ているところはいいと言われました。あとは自分のイメージを周囲と共有できるよう、もっと伝えなくてはならない、と。やるのは自分だから、そのイメージを共有しないと良いサッカーも出来ないから、と」

清武自身、海外で司令塔としてプレーするにあたり、自身のイメージを周囲に伝えることに努めてきた。だからこそ余計に質量のある言葉だ。

「僕も海外でプレーしたいので、もっとアグレッシブにやらなくちゃと思います。リーガではまだ日本人が活躍した実績がないので、清武くんに先駆者となってもらいたいし、それに僕も続きたいです。リフティング対決は敢えて負けてあげました。スペインに気持ちよく行ってもらおうと思って(笑)」

最後にはいつもの“ダイスケ節”も忘れないが、敬愛する偉大な先輩と過ごす時間は、坂井の成長に確実につながるはずだ。

 

中学時代の清武をスカウトした片野坂知宏監督

練習参加に誘った片野坂監督は、清武のU-15時代から、強化部スカウトとしてその才能を見きわめていた。

「小さいけれどすごく動くし技術があって、面白い選手だと思っていた。技術は本当に高かった。ただ、小さいのでプロになるときにどうなるかなと思っていたけど。でも、他の同年代の選手のほうがスピードや強さがあったなかで、キヨは、自分らしさを出した。自分の特徴をよく理解して、自分がどうすれば生きるかということを考えてプレーしていた」と、当時の印象を振り返る。

いまも体つきはほっそりとしているが、それでもブンデスリーガで中心選手として活躍できたのは何故なのかと問うと、指揮官はこう分析してくれた。

「やはり技術がしっかりしていることと、判断が良い。フィジカルでウィークがあることを見せないプレーをしているのは流石。他のヨーロッパの選手にない清武の良さを出している。(坂井)大将もそういう判断や技術のところを参考にしてほしい」

大分で育った才能と、彼をトリニータに招いたスカウトの、世界的プレーヤーと監督としての再会。その育成に関わってきた全員が、清武弘嗣の活躍を誇りに思い、さらなる期待をかけている。

「あのプレースタイルが必要とされるところで生かされてきたことも彼の成長の一因。技術の高いスペインでさらに生かされてほしい。チャンピオンズリーグを見るのが楽しみです」