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今節の見どころ

難しい変則的3連戦の初戦。強烈な個を擁する岩手を組織的攻撃で上回れ

 

前回対戦時も相手の激しい追撃に脅かされた記憶がある。球際強く戦いシンプルに力強くゴールへと向かってくる岩手に対し、こちらはそれとはまったく異なるスタイルを表現して上回れるか。

 

異例の緊急ミーティングで施した前節の修正

複数の選手とスタッフにコロナ感染者が確認され、さらに負傷者も出て、一時はスクランブル状態に陥っていたチーム。渡邉新太と高畑奎汰の負傷による離脱も発表され、厳しさを増す一方で、コロナによる隔離や怪我から復帰する選手もいて、コンディションを上げつつある。スタッフも順次、持ち場に戻り、選手にかかる負荷も軽減されたが、下平隆宏監督は「陰でチームを支えてくれるスタッフのありがたみを、僕も含めみんながあらためて認識するいい機会だった」と捉える。
 
J1参入プレーオフ圏に食い込むためには急ピッチで勝点を積むことが必要な中、前節の徳島戦はアディショナルタイムに追いつかれて勝点2を失う結果に。勝たなくてはならないというプレッシャーに圧され、2点のリードを守ろうとして意識が守備へと傾いて、相手の勢いを受けてしまったことが痛恨だった。
 
その試合運びの課題を重く見た下平監督は、試合翌日にアウェイから帰り着いたクラブハウスで、通常はそのまま解散するところを、居残り組も含めたチーム全員での緊急ミーティングを実施。「失点しないようにする≠守備を固める」であることを再確認し、勇気を持って全員でポゼッションすることを強く求めた。
 
「たとえば高木駿がボールを持った瞬間にCBはポジションを取らなきゃいけないしボランチはピックアップにこなきゃいけない。でも、誰かがそういうことをしないとか、勇気を出せずに『もう蹴ってしまえ、それでなんとかしのごう』というスタンスになってしまうと、それが成立しなくなる」
 
ポゼッションスタイルを標榜するチームの最も理想的な“失点しない方法”は、守備固めではなくポゼッションだ。「まずはもっと自分たちの積み上げてきたものをより表現していくことが、この先の12試合は大事になってくると思う」と三竿雄斗。チームメイトたちにも、勝ちたい気持ちをもっと出していくよう要求する。
 

強烈な個を生かしパワフルに戦ってくる岩手

今節、ホームに迎える岩手は現在31試合を終えて8勝6分17敗で20位。前節、秋田との“北東北ダービー”に0-1で敗れて順位を下げた。その試合でイエローカードを提示されたブレンネルが、今節は累積警告で出場停止。さらに試合前日には選手2名がコロナ陽性判定となった。
 
とはいうものの、堅固な5枚のブロックを構え、長いボールを前線のスペースに送ってカウンター攻撃を繰り出すスタイルは迫力満点。大分との前回対戦では後半の追撃時に強い圧をかけられた。第29節の横浜FC戦では好調な相手に3-0で勝利している。外国籍選手を含め各ポジションには個の能力の高い選手が揃っており、その個のポテンシャルを生かしたサッカーで相手を苦しめる。モレラトやキム・ジョンミンの他に先月加入したクリスティアーノも徐々に調子を上げつつあり、その周辺の選手も含めて誰がピッチに立つかが気になるところだ。
 
そんな岩手の迫力ある反撃に備えつつ、固められたゴール前をどう攻略するかが今節のカギ。2試合連続得点中のサムエル、シュートチャンスを増やしたい呉屋大翔に加え、18日に加入が発表された金崎夢生の登録も19日に完了し、早速出場できる態勢が整っている。得点するためにどう攻めるか、またロストした際にいかに早くスムーズに切り替えられるか、戦術的一体感が問われそうだ。
 
今節が終われば中2日で延期となっていた第28節のアウェイ水戸戦、そこから中4日で次節のアウェイ秋田戦というイレギュラーな3連戦。さらに翌週はアウェイ新潟戦と移動の負荷の高い敵地戦が続く。厳しい暑さの中、ここを乗り切る勢いをつけるためにも、今節はしっかりと勝ちたい。「相手のことはリスペクトしなくてはならないが、下位相手に勝てなければ取りこぼしということになる」と下平監督。したたかに勝点を積み、昇格争いに食い込んでいきたい。
 

試合に向けての監督・選手コメント

■下平隆宏監督
 
どういう状況でも次の試合に向かって一戦一戦勝点3を目指すことには変わりがない。とはいえ3連戦なので、メンバー選考はいまのチーム状況を含めて考えていかなくてはならない。ここ3試合で勝点3。これは1勝2敗しているのと同じ数字だと選手たちに伝え、より勝点が必要だということを話した。
 
岩手はチームのスタイルが、5枚で守ることをベースにしている。ボールを持つよりはしっかり守った中からのカウンター。パワーのある外国籍選手が何人もいて、秋田監督が上手くコントロールされているという印象。結果こそ出なかったりして順位は下にいるが、一発を持った選手がたくさんいるので厄介なチーム。スタイル的に僕らがボールを持つ展開になればなるほど、彼らのストロングが出てきてしまうと思うので、そのへんも考えて戦わなくてはならない。
 
まず攻撃をしっかりしてゲームを支配した中で勝点3が欲しいと思っているが、ゲームには流れがあるし、前回対戦でも最後はかなり押し込まれて苦しい展開になった中での勝利なので、簡単なゲームにはならないと思う。理想はしっかり主導権を握って勝利したいと考えている。
 
■DF 3 三竿雄斗
 
昇格を目指している中で、引き分けでは上には行けない。後半戦に入ってから負けなしで来れてはいるが、勝たなくてはならないので、引き分けは負けに等しい。まずはもっと自分たちの積み上げてきたものを、より表現していくことが、この先の12試合は大事になってくると思う。あとは球際のところや守り切るところ、運動量など、ひとりひとりがもっと責任を持ってピッチでやらなくてはならない。まずは自分たちがやるべきサッカーを、ひとりひとりが責任持ってピッチに立つことが、いまは大事。
 
サムエルは高さがあるしパワーもあり、町田戦や徳島戦のようなシュートを持っている。同じ左利きでもあるので、欲しいボールもある程度わかってきた中で、自分のところからもっといいボールを供給できればと思う。呉屋はペナルティーエリアに入ったら脅威になれる選手なので、なるべくいい状態で2人がボールを受けられるように、自分が起点になれればと思っている。
 
チームとして、勝ちたいという気持ちがまだ足りない。この先の12試合は一戦一戦が決勝戦のようになってくる。12連勝する可能性も、確率としてはゼロではない。自分は強い個人が11人集まってはじめて強いチームになると思っているので、ひとりひとりのモチベーションや思いは別々でもいいのだが、ピッチに立ったらもっと勝つために表現しなくてはならないと思う。