TORITENトリテン

今節の見どころ

前節終盤の勢いを今節は立ち上がりから。増してきた一体感を勝点に結実させる

 

前節の長崎戦からぐっとチームの雰囲気が上向いた感触がある。復帰してきた経験豊富な選手たちがそれぞれのストロングポイントを発揮しながら、献身的にチームをまとめあげていく。最も必要だった要素が、シーズン最終盤に整いはじめた。

 

風の影響が出やすいJITスタジアム

敵地へと移動する8日は台風13号の影響で飛行機が欠航になる恐れがあったため、急遽、予定を変更。菊住輝マネージャーの機転のおかげで、チームは無事に甲府へと到着した。
 
台風は8日18時現在、御前崎市の南南西約170kmからゆっくりと北東へ。中心気圧は1000hPa、中心付近の最大風速は18m/sで、当初の予想よりもぐっとスピードを落としつつ、このあと熱帯低気圧に変わる予報。この時点で甲府市の9日の天気は晴一時雨、試合がはじまる18時以降の降水確率は20%。気になる風速は15時頃がピークとなりそうだ。
 
昨季は第1節のホーム水戸戦がコロナ禍の影響で日程変更になったため、実質的な開幕は第2節のアウェイ甲府戦だった。あの日のJITスタジアムは強風。セットプレー時にセットしたボールが風に流されて動いてしまうレベルで、もちろん空中のボールも軌道を狂わされた。おかげで両軍ともに狙いどおりのプレーを表現しづらく、難しい展開に。32分に長谷川元希に先制点を奪われたが、90+4分、下田北斗のFKをパワープレーで上がっていた吉田舜がヘディングでつなぎ、ペレイラが頭で押し込んで1-1で終わっている。
 
今節も、とにかく風の影響が気がかりだ。当然、ホームチームのほうがスタジアムの特徴には慣れているのだが、いかなる環境になっても、その中で賢く戦いたい。伊佐耕平は「事故が起きるかもしれないので、守備はより集中することが大事。逆に攻撃ではこちらもそういうところを狙っていきたい」と引き締まった表情で話した。
 

隙を突かれればたちまちピンチになる危険性

今週のトレーニングは非常に良好な雰囲気で進められた。前節の長崎戦で2点ビハインドから追いついた勢いを上昇気流へとつなげるように、特に経験豊富なメンバーの献身的な舵取りが目立った。やはりキャプテン梅崎司の存在感は大きく、また、昨季チーム得点王の長沢駿が自らの苦しい時期を乗り越えて復調し2戦連続弾を挙げていることも、チームの熱を高あめているようだった。
 
前節の長崎に続き、今節の甲府も特徴的な攻撃陣が居並ぶチーム。ピーター・ウタカ、クリスティアーノ、そして三平和司らが虎視眈々とゴールを狙う。甲府も大分と同じく後半戦に入ってから勝点を積めておらず現在は6戦未勝利という状態だが、たとえば風の影響などで狙いが表現できなかったとしても、攻撃陣だけで得点できる力が十分にある。特に三平はGKの足元を狙うことなどにも長けており、隙を見せればたちまちピンチに陥ることになりそうなので、つねにアラートにしておきたい。
 
守備は整理されている印象で、前節よりも攻略の難易度は高いかもしれないが、前節終盤はやはり負傷から復帰した町田也真人が存在感を見せた。開幕から負傷者が多発したチームはここまでそのときどきの状況に応じて多彩な戦い方を採用し、それがベースの定まらなさにもなっていたのだが、町田が戦況の中で生み出すイマジネーションは、これまでに積み上げてきたものたちを必要に応じて引き出しているようだ。「言われたことだけをやるのではダメだし、それを避けるために監督やコーチたちも出来るだけ指示を出さずにいたと思う。その都度の状況を見てプレーするのが、やっぱり楽しい」と町田。
 
試合運びや相手との駆け引きにおいては、やはり経験値がものを言う。これまでは野村直輝が多く背負ってきたところをベテランたちの復帰が後押しし、それに引き出されるように若手たちも新たな魅力を放ちはじめている。大混戦のまま突入したシーズン最終盤、この芽生えはじめた好感触を、いまこそ勝点へと結実させたい。
 

試合に向けての監督・選手コメント

■下平隆宏監督
 
いまだ混戦で先が見えないが、この状況を楽しんでやるしかない。いつもどおり、そしていままでよりも1試合に集中して臨むのみ。選手たちにも話したが、下を気にしていても仕方がないので、上だけ見てやれることをしっかりやっていこうと。いまはまたチームの一体感がぐっと上がっている。前節は、勝てはしなかったが全体の雰囲気からして、ああいうゲームを追いつけたということで悪くなかった。怪我人が戻ってきてチームの士気も上がっている。ウメ(梅崎司)が戻ってきて活気を与えていることもあるし、ウメに引っ張られてみんなが上げてきている。長沢駿も復帰して2得点しているし、流れが上向いている手応えを、僕は感じている。台風がどれだけ影響するかが気がかりだが、普通にサッカーをやらせてほしいと、それだけを願っている。
 
甲府も、長崎ほどの人数ではないが、決定力のある攻撃陣が多く、相手の隙を突いてくるのが上手い。われわれとしては隙を与えてはならず、簡単な失点を避けなくてはならない。今日のトレーニングでは守備時のポジショニングと、前節課題の出たクロス対応のところに修正を施した。
 
攻撃はあらためてビルドアップを整理し、アタックのところを確認してみんなのイメージを共有した。テンションや強度の面で、すごくよかったと思う。前節は2トップを採用したが、クロスの質もよかったし中の入り方も工夫していたので、2点取れたし、攻撃のバリエーションも少しずつ増えてきていて、いままでやってきたトレーニングの成果がやっと出てきはじめた手応えがある。
 
■MF 7 梅崎司
 
前節は自分たちのミスから失点してしまったので本当にもったいなかった。先週は守備についてミーティングで突き詰めたにもかかわらず、それが出来なかった事実がある。ただ、その場面以外はすごく集中して戦えていたし、得点シーン以外にもいい形が出来ていた。攻撃的に行きたいというチームの姿勢を表現できていた。逆転こそ出来なかったが2点差を追いつけたということで、ポジティブな引き分けだったと考えている。
 
みんな長崎戦では落ち着いていて、追撃のときも行け行けどんどんになり過ぎずバランスを取りながら、スピードアップするところはして、ブーストをかけるところはかけてということが出来ていた。相手をしっかり押し込んで回収してということも出来ていたし、被カウンターのシーンでもしっかり戻ることが出来ていたので、そのサイクルをより多く長くして、最後のところでよりクオリティーを高めていきたい。
 
隙を作らないところについては、昨季のチームも尻上がりによくなって勝負強さが出てきた。攻撃の面ではこちらもいい形を出せるようになってきているので、それをもっともっと得点という数字に表して、勝負強く戦っていきたい。長沢駿が復調して2試合連続で得点してくれているが、彼のような存在は本当にすごく大きい。DAZNの試合後インタビューでもすごく強い思いが感じられた。その熱量をみんなに伝染させていきたいし、僕自身もそういったものを、残り9試合のピッチで表現していきたい。