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試合レポート

いわきの“奇襲”に対応できず。積み上げてきたものを出せず両翼をもがれる

 

マンツーマン気味にハメてきた相手の作戦は確かに想定外ではあったが、そういう相手と戦った経験も過去にはあった。その経験をどうして生かせなかったのか、チームはあらためて現状に向き合う必要性に迫られた。

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「3-4-1-2+可変」でハメてきたいわき

田村雄三監督体制になってから6戦無敗と好調のいわき。一貫して4-1-4-1のフォーメーションで結果を出してきていたのだが、今節はフタを開けてみるとまさかの3-4-1-2システムだった。前線からハイプレスで大分のビルドアップを阻み、長いボールを蹴らせて大分の3トップは同数の3バックで潰す。サイドの枚数も合わせ、大分が数的優位を作りにいくと4バックに変形してそこも対人強度で抑えた。
 
立ち上がり間もなく、相手の“奇襲”に気づいたチーム。だが、マンツーマン気味に守備をハメてくる相手との対戦はこれまでも何度か経験している。下平隆宏監督としては、そういう場合の戦い方もしっかりと落とし込めていると考えていたのだが、ピッチ上の戦況の中で徐々にチームは思考を分断されていった。
 
前節の熊本戦でもそうしたように、激しいプレッシャーを引きつけてサムエルや藤本一輝をターゲットに長いボールを送ったが、個々のフィジカル強化をチームのストロングポイントとしているいわきは、球際強くそこを潰して大分に起点を作らせてくれない。上夷克典と野嶽惇也が敢えて低い位置を取って相手WBを引き出し、その背後のスペースを突く算段も、前線で起点が作れなくては発動しないままだ。

 

しのぎきれず前半終了間際にセットプレーで失点

逆にいわきは、ボールを奪えば鋭いカウンターを繰り出して大分ゴールへと迫った。22分には西川幸之介のキックを山下優人がヘディングで跳ね返し、トップ下の山口大輝が組み立てて迷いなく有田稜に狙わせる形を作る。西川が飛び出して対応したものの、明確に好機を築いているのはいわきのほうだった。
 
38分には野嶽のスローインをサムエルが前に送り、抜け出した藤本がクロスを入れる決定機を狙いどおりに築いたが、最後に飛び込んだ渡邉新太より先に遠藤凌に触られ、仕留めることは出来ない。それで得た保田堅心の右CKには安藤智哉が頭で合わせ、これも相手に触られて枠外へと逸れた。
 
相手のプレッシングに阻まれて苦しい戦況を、なんとか割り切って耐え、スコアレスで折り返したかったところ。前半アディショナルタイム、鹿野修平からのフィードに反応したスピード自慢の加瀬直輝への野嶽の対応がファウルとなり、自陣右サイドでFKを与えた。山下のキックはサムエルが跳ね返したのだが、こぼれ球を拾った加瀬が送った浮き球を有田が折り返し、完全に崩された中で山口にヘディングで沈められて45+5分に失点。ビハインドを負ってハーフタイムを迎えることになった。

 

タスクは整理したがなかなか遂行しきれない

いわきは谷村海那を岩渕弘人に代えて後半をスタート。大分はハーフタイムに自分たちのスタイルの中でやるべきことを整理して臨んだはずだった。攻撃の組み立て役を担う野村直輝が激しく相手にマークされていることを受けて敢えて野村の立ち位置を低くし、4-2-3-1のような形を取って相手の背後のスペースをさらに広大に広げる。
 
だが、そんな狙いをもって入った後半立ち上がりもいわきのペースで進むのを見ると、下平監督は56分、野村と中川を池田廉と鮎川峻に交代した。疲労した2人に代えて池田のテクニックと鮎川の裏抜けで状況打開を図ったものと思われ、直後の57分には鮎川、藤本とカウンターでつないでサムエルが収めたところから鮎川が鋭く切り返して狙ったが、弾道は枠の右へ。
 
反撃の狼煙をあげたかに見えた時間帯だったが、58分、またも鹿野のロングフィードから加瀬にグラウンダークロスを入れられ、ニアでそらした山口の背後で岩渕に押し込まれて2失点目。戦況はさらに厳しくなった。

 

松尾の泥臭い得点が生まれはしたが…

65分には藤本とサムエルを松尾勇佑と伊佐耕平にチェンジ。松尾が右SHに入り、渡邉が左に回った。段階的な交代により機動力が高まり前線でボールが動く場面も増えたが、69分にはいわきが加瀬、山口、江川慶城を吉澤柊、永井颯太、下田栄祐に代えて布陣の強度を維持する。73分には有田のクロスに岩渕がスライディングしてわずかに合わなかったが、いわきがあわや3点目という場面も。
 
大分は77分、渡邉を弓場将輝に交代。弓場と保田のダブルボランチとし、池田を一列前に上げた。これにより中盤の流動性は高まったが、意思疎通の問題なのか疲労のせいなのか、パスミスが続出して自滅するように攻撃の形を作ることが出来ない。
 
安藤とデルランを前線に上げてパワープレーを仕掛けていた試合終盤。野嶽のフィードを安藤が競ってゴール前へと送ったところで、対応に飛び出した相手GKとDFが一瞬、お見合い状態となった。その隙を見逃さなかったのが松尾だ。ふたりの間に飛び込んで伸ばした右足で、泥臭く1点を返した。

 

スタイル体現に必要なスキルと判断力を

だが、追撃もそこまでだった。最後まで攻め合うがともに決定機を仕留めきれず、90+2分に山下を黒宮渉に代えて時間を使ったいわきが逃げ切るかたちで、試合は1-2で終了した。いわきの作戦を最後まで覆せないまま、終始苦しい展開となった一戦だった。
 
試合後には選手たちから「蹴りすぎた」という声が多く聞かれた。いわきの激しいハイプレスを受けて、前節のようにサムエルや藤本に収めさせることを狙って配球したものの、肝心のその前線で起点を作ることが出来ない。それでもなおそのプレーを続けたのは、ビルドアップのスキル不足なのか判断のミスなのか。
 
上夷も相手WBとの駆け引きで高い位置を取れず、なかなか攻撃に絡むことが出来なかった。野嶽はたまにタイミングよく前線に絡みに行く意識を見せたが、藤本がそれを上手く使えず、逆にスペースを空ける事態につながった。
 
蹴るのかつなぐのかの判断も、コンビネーションもバラバラになってしまった苦しい試合。どの判断を優先するのか、チームはもう一度整理しなくてはならない。優先順位の高いプレーを実行するスキルが不足しているのであれば、その課題をどう乗り越えていくかを選ぶことも必要になってくる。「戦術的な未熟さが出た試合だった」と中川。プレー精度ももちろんだが、メンバーひとりひとりのサッカー理解を、もっと深めなくてはならないようだ。

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