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今節の見どころ

昇格争いに絡み続けていくために、絶対に落とせない“降格組対決”

 

前半戦は過密日程に苦しみ、その出遅れをいま巻き返しつつある同士。ともにポゼッションスタイルの練度を高めてきたいま、今季2度目の対戦は、昇格争いでの生き残りを懸けたタフな一戦となる。

 

スクランブル状態も総力で戦うのみ

選手とスタッフに立て続けにコロナ感染者が確認されたチーム。他に新たに負傷者も出ており、10日に公開されたトレーニングでは、離脱したスタッフの穴埋めとして柿本倫明強化部長や上本大海スカウトもグラウンドで手伝う非常事態に。下平隆弘監督も、スタッフの負担を軽減するために練習着の洗濯を各自でやるようにと選手に呼びかけた。練習後の機材の片付けは、3チームに分けて行ったミニゲームで最下位になったチームが担当するなど、こういう状況でも深刻にならず前向きに取り組めるような雰囲気が作られていた。
 
一方で、コロナ隔離期間や負傷のリハビリを終えた選手の姿も。隔離期間明けの選手は少しでもスムーズに戦列復帰できるよう、チームがオフの日にもクラブハウスに来て、フィジコとトレーナーに指導されながらコンディションを高めた上で、オフ明けの全体練習に合流したという。
 
この第7波の中では誰がどのタイミングで離脱するかの予測が出来ない。最悪、試合当日の検査で陽性判定となる可能性もあり、「キックオフまで気を緩められない」と下平監督。「アクシデントが起きることを想定しながら準備を進めなくては」と、連戦の終わった現在もマネジメントは難しそうだ。
 
シーズン折り返し後は3勝5分。無敗ではあるが、勝ちきれていない。個人的に呉屋大翔の調子は良さそうなのだが、前々節の東京V戦も前節の町田戦も呉屋のシュートチャンスは1本しかなく、チームとして得点するためにフィニッシャーをどう生かしていくかを整理していきたいところだ。特に今節は呉屋が相性がいいとする古巣戦。勝利のために得点してもらいたい。
 

勝ちきれていないチーム同士が勝点3を争う

徳島は大分と同時にJ2降格し、大分と同じくルヴァンカップ参戦のため今季前半戦のほとんどを連戦で過ごした“仲間”でもある。大分は昨季から選手はほぼ変わらないが指揮官が替わり、逆に徳島は指揮官は継続だが選手が多く入れ替わって、ともに連戦の中での戦術の落とし込みに苦労し、昇格争いに大きく出遅れた。連戦が一息ついてチームをベースアップし、いまようやく巻き返しはじめたところも、そしてその中でいまひとつ勝ちきれず引き分けが多くなっていることも共通点だ。
 
昇格争いに絡み続けるために、双方にとって絶対に落とせない直接対決。前回対戦では出足の早さや切り替えで徳島が上回ったが、大分が長沢駿の得点で勝利している。その後に練度を高めたポゼッションスタイルのチーム同士、今節の激突はどのようなゲームを描き出すか。攻守で立ち位置を取り合いながら主導権を争う展開が予想される。
 
大分としては、徳島の制限をかわしながらボールを運びたいところ。ピッチ上での駆け引きや攻守の切り替えの早さ・スムーズさがカギになる一戦で、選手たちがどれだけ賢くパスコースを確保し、相手の攻撃を阻むよう立ち回れるかが試されそうだ。「もうサッカー云々よりも勝ち負けが大事な時期になっている」と、呉屋も強い気持ちを表明する。昇格争いに食い下がるための勝点3を、阿波踊りの熱気あふれる敵地で、なんとしても掴み取りたい。
 

試合に向けての監督・選手コメント

■下平隆宏監督
 
選手とスタッフにコロナ感染者が出ており、それ以外にもまた怪我人も出たりしているので、メンバーが入れ替わりながらというかたちにはなるが、幸いにして選手の数はいるので、代わりに出てくる選手がまた違うパワーを出してくれることに期待したい。
 
徳島さんも引き分けが多く、われわれと似たような数字。ポゼッションスタイルのチームでもあるので、そういったところでも勝点が取れるよう準備したい。徳島はボールを持つことで守備をしているチームなので、こちらがボールを奪って攻撃できれば、打ち破れるのかなと思う。どの試合でもつねに勝点3しか狙っていない。プレーオフ圏内に入っていくためにはマスト。
 
いまは選手もそうだが、陰でチームを支えるスタッフにも感染者が出ている。こういうときこそチームの総合力が問われる。こういったスクランブルな状況をみんなで乗り越えていこうという話をして、そういうことも明るく前向きにやりながら、勝ちをつかめるようにしたい。またそういった中で勝てれば、それが充実感や達成感につながっていくと思うので、工夫しながらやっていきたい。
 
■DF 49 羽田健人
 
3週間くらい負傷離脱していて、前々節、5週ぶりに試合に出た。僕が離脱してからチームは連勝した(苦笑)。離脱している間にチームは団結力を高め、練習でも積極的に声を出すようになった。僕はその前からしっかり声を出せとシモさん(下平隆宏監督)に言われ続けていて、声を出す担当をやっていたので、怪我から復帰して変化していたチームにもスムーズに戻れた。
 
ただ、そのあとは勝てていない。点は取れているが、失点している。暑さで体に負担もかかっているが、自分ももっと走らなくてはならない。セカンドボールには強く行って奪いきりたい。ビルドアップのミスも減らしていきたいし、もっと両サイドに展開する大きなパスを入れていきたい。復帰後のコンディションももっと上げなくてはならない。
 
——東京V戦の2点目の縦パスは素晴らしかった。
 
気持ちよかった。いままでゴール前のところでは横パスばかり選択してしまっていたので、それは初めての挑戦だった。アナリストと個人的に契約し、その人に「ゴール前のところをもっと上げていったら高いレベルに行けるよ」とアドバイスされていた。それを意識していた部分もあったと思う。
 
■FW 33 呉屋大翔
 
徳島は古巣だが、知っているメンバーも少なくなったので、そこまで意識はしていない。でも基本的に古巣戦では毎回得点したり勝ったりしているので、古巣とは相性がいいかもしれない。
 
1トップだと中の枚数が少なくなってしまい、特にシャドーがゴール前に入ってこれないタイプだと余計に孤立してしまう感があるので、そのへんはやりながら調整していきたい。
 
前節もシュートを1本しか打てていないし、前々節は点を取ったがやはりシュート1本。もう少し本数を増やさないと入るものも入らないので、そこは工夫が必要。ただ、フォーメーションがどうでも、まずは監督が求めることを全うし、チームとして勝ちに持っていくことが大事。もうサッカー云々よりも勝ち負けが大事な時期になっていると思うので、チーム全員でそういうふうに捉えながらやることが大事だと思う。