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試合レポート

粘り強い攻略が相手の牙城決壊を招いて3-0。4試合ぶり白星に夢生の復帰が花を添える

 

サウナのような高温多湿のピッチで粘り強く続けた攻略が相手の牙城を決壊させての3得点、前節の反省も生かしながら最後まで攻め続けてクリーンシート。13年ぶり復帰の金崎夢生の先発出場も、4試合ぶりの白星に花を添えた。

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ボールを動かして攻めるがやはり堅い岩手の5枚

今節からスタートする変則的な3連戦。タフなアウェイ連戦を乗り切るマネジメント面も考慮されたようだ。またコロナによる隔離や負傷から復帰してきたメンバーも戦列に加わって連戦での入れ替えが可能ともなり、今節は前節から先発5人を入れ替えて基本フォーメーションは3-5-2。18日に加入が発表された金崎夢生が、早速2トップの一角で先発となった。スタート時にはペレイラと上夷克典の立ち位置が変わっていたこともトピックのひとつだ。
 
対する岩手はいつもの3-4-2-1。試合前日に選手2名のコロナ感染が確認され、急造布陣となったようだが、秋田豊監督の徹底したチームづくりが反映されてか、立ち上がりの組織的守備はさすがの堅さ。大分がボールを動かしながら相手のプレスを誘い、そのスペースを使って相手陣まで攻め込んでも、ゴール前を固めた5枚のブロックは動かず。浮き球のパスやクロスも跳ね返され、金崎や呉屋大翔が下がって受けるなど流動的に動いても、序盤はなかなか崩れる気配がなかった。
 
岩手はボールを奪うと前線に攻め残る攻撃陣へとシンプルに送るが、こちらも大分の守備陣が局面で対応して収めさせない。13分にはミスを突かれてオタボーにシュートを放たれたが枠の外。単発で厚みを出すことが出来ない岩手の攻撃を潰しては、粘り強く攻める時間が続いた。井上健太がマッチアップする加々美登生とガチガチにやりあっている中、上夷のフィードで井上を走らせもしたが、やはりフィニッシュの形までは作れなかった。上夷とペレイラは間もなく、前節までの並びに戻る。

 

目指す形から生まれた中川先制弾と弓場の追加点

だが、そうやって辛抱強くボールを動かし相手を引き出そうと継続していたプレーが、徐々に効果を表しはじめる。この日の昭和電工ドーム大分は気温29.3°Cに湿度75%で、降雨の心配もあったが熱中症対策のため屋根が開放された状態とはいうものの、サウナのような息苦しさだった。ポゼッションに対してリアクションで動く岩手の守備の足が徐々に鈍くなる。
 
35分にサイドを突破した加々美の低く速いクロスに弓削翼が飛び込みわずかに合わないというピンチもあったが、その4分後、大分が先制に成功する。三竿雄斗の鋭い縦パスを、内側のスペースに入っていた藤本一輝が左に開いていた弓場将輝へとフリック。その弓場から再び戻ってきたボールを藤本がゴール前に出したところへ、走り込んできた中川寛斗が左足で流し込んで鮮やかにリードを奪った。チームは全員で、松本怜の第3子誕生を祝うゆりかごダンスを披露する。
 
44分には追加点。高い位置で相手のパスをカットした呉屋がすかさず弓場に縦パスを送ると、弓場は味方の上がりを待とうと周囲を確認したが、距離が遠いのを見て自らシュートを選択。利き足ではない右足を振り抜くと、弾道は野澤大志ブランドンに触られながらもゴールネットを揺らした。

松本怜の第3子誕生を祝うゆりかごの後。呉屋の手が「7」を示す

2点リードしての後半も攻める姿勢を継続

奇しくも前節の徳島戦と同じ、2点リードしての折り返し。守りに入って相手の勢いを引き出し追いつかれてしまった前節の反省と修正を、トレーニングから徹底してきたチームは、今節は攻める姿勢を貫いた。
 
大分は藤本を増山朝陽に、岩手は宮市剛をビスマルクに代えて後半をスタート。48分、三竿が増山とのコンビネーションで高い位置で起点を作り、サポートに入ったペレイラを使って抜け出してのクロスを弓場がシュートしたが、牟田雄祐のブロックに遭って枠の右へ。51分には中川のフィードを相手がクリアしたボールを呉屋が拾い、増山に預けてサイドで受けるとクロス。惜しくも金崎には合わず野澤にキャッチされたが、大分の時間帯が続いた。
 
流れを変えたい岩手は56分に1トップ2シャドーを一挙3枚替え。モレラトを韓勇太、オタボーを中村充孝、増田隼司を奥山洋平に代えて、これまでと同様にカウンターを狙う。60分には奥山が、ペレイラから羽田健人へのパスを狙って奪うとそのまま持ち込んでシュートしたが、弾道は枠上に逸れた。

 

随所でコンビネーション。増山の3点目も

64分、大分は中川を町田也真人、金崎をサムエルに2枚替え。68分には増山とのコンビネーションで攻め上がった三竿のクロスに町田が飛び込むが、惜しくもミートできず。だが、活性化した左サイドからの攻撃は止むことなく、73分には3点目が生まれる。増山が自らのスローインから呉屋とのパス交換で潜り込み、やさしいスルーパス。上手く抜け出した町田のシュートは野澤に弾き出されたが、そのこぼれ球を増山がきっちりと押し込んで仕留めた。
 
75分には三竿のクロスにサムエルがヘディングで合わせて枠の上。76分、大分が弓場をエドゥアルド・ネットに代えると、岩手も80分、弓削を小松駿太に交代した。86分には大分が井上を香川勇気にチェンジ。増山が右WBに回り香川は左に入る。離脱期間もあり第12節・栃木戦以来の出場となった香川だが、早速相手に倒されてFKのチャンスを得るなど存在感を発揮。ネットもビルドアップに変化をつけながらポゼッション率を高め相手の時間を削った。岩手もボールを奪うと勢いよく攻め返すのだが、パスの精度を欠いて大分に拾われる場面が散見される。ペレイラも集中を切らさず守備対応。88分にはカウンターから呉屋がクロスを入れ、相手にブロックされはしたが、今節は最後まで攻め続ける。
 
90+2分には加々美のシュートが枠の上。その後の韓のシュートも枠を大きく外れた。走らされた岩手の選手の消耗は激しい。一方でビルドアップにスペースを埋めにと中盤の底で奮闘した羽田も足が攣るのを堪えながら岩手の攻撃の芽を摘んだ。呉屋も自陣深くまで戻って守備をしながら、またボールをつないで前へと出ていくチームは、長いホイッスルが鳴るまでその姿勢を貫きとおし、クリーンシートで試合を終えた。

 

連勝すればプレーオフ圏内が見えてくる

前節の反省から勇気を持ってビルドアップすることを誓って試合に臨み、そのポゼッションが実って勝ち得た3-0というスコア。勝ち切ったのは4試合ぶりで、無失点試合は第25節の山口戦以来、無失点で勝利したのは第19節の群馬戦以来だった。
 
弓場や中川、香川ら今節復帰したメンバーが結果を出したこと、前節までに復帰した野村直輝や小林裕紀が今節は休養を取れていること、また他にも復帰している選手がいるなど、連戦を乗り切るための材料は揃いつつある。加えて金崎が約3ヶ月ぶりの公式戦で一定の動きを披露したことも、今後につながる希望となった。ポジション争いは激化しているという。
 
次は中2日で、仕切り直しの第28節・アウェイ水戸戦。水戸は今節、山口に0-1で敗れ、秋葉忠弘監督に激しく喝を入れられた模様だ。おそらく強度を高めて臨んでくるだろう。こちらもプレーオフ圏内を目指して連勝を狙いにいく。