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試合レポート

松尾の初ゴールで先制も追いつかれドロー。勝点1を積めたことが収穫に

 

終始、磐田の高い攻撃力にさらされ続けた90分間だった。それでも状況判断して手を変えたことで、松尾の初ゴールでの先制に成功。だが、どんどんギアアップする磐田に対しては、勝点1を掴むのがやっとという展開になった。

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立ち上がりはサイドの主導権を争ったが

試合後の横内昭展監督や磐田の選手たちの悔しがり方を見るにつけ、そうだろうなという内容と展開の一戦だった。序盤から磐田に高い攻撃力を見せつけられる中で、粘り強く戦いながら先制には成功したが、プレスの手を強め次々に強力なプレーヤーを投入してくる相手の追撃から逃げ切ることは出来ず、最後は防戦一方となって、辛くも勝点1を掴んだかたちになった。
 
7連戦の3戦目、前の試合から中2日の磐田は、予想どおりフィールドプレーヤー全員をターンオーバーし、前々節の熊本戦と同じスタメン。大分は負傷したペレイラの位置に羽田健人を配置し、負傷明けの伊佐耕平と野嶽惇也がベンチに入った。
 
立ち上がりは激しく前線からプレスをかけながらサイドで主導権を争った両軍。特に大分の右サイドと磐田の左サイドのマッチアップは迫力満点だったが、磐田の選手たちが個々で少しずつ上回り、松原后の攻め上がりから立て続けに好機を築くようになった。4分、磐田の左サイド敵陣深くでのスローインから上原力也がクロスを送り、こぼれ球をドゥドゥがシュートしたが安藤智哉がブロック。10分には松原后のシュートを西川幸之介がセーブした。

 

粘り強い対応から松尾がワンチャンスを仕留めた

21分には藤本一輝がエリア内にまで持ち込んで右足を振り抜いたが上原にブロックされる。その流れで得た2本のCKも実らせることが出来ず、逆に24分にはカウンターを受けたが、ドゥドゥへのスルーパスには西川が素早く対応した。30分には西川の野村直輝への長いクサビがリカルド・グラッサにカットされ、山田大記を経由してボールを受けたドゥドゥが素早くゴール前に配球したが、金子翔太に紙一重で合わなかったところを安藤が掻き出す。
 
そうして粘り強く対応しながら少しずつポゼッションを高めた大分は、35分には藤本と高畑奎汰がクロスを入れる2つの好機も築いたが、いずれも三浦龍輝にキャッチされた。39分には右サイドにも起点を作るべくボールが運ばれるが、相手の対応に遭い、攻撃は成立しない。
 
だが、磐田の勢いあふれるサイド攻撃が続き41分には松原のクロスに合わせた山田のヘディングシュートが枠の右に逸れた直後の42分。大分は絶好のワンチャンスを見逃さずに仕留めた。相手を動かしながら最終ラインとボランチでパス交換する中から、間に下りてきて弓場将輝のパスを受けた中川寛斗がすかさず右サイド裏へとボールを送る。抜け出した松尾勇佑の前には広大なスペース。中へと走り込む味方も帰陣する相手も間に合わず、飛び出していた三浦が一瞬の対応を迷ったのに対して、松尾は角度のないところから迷いなく狙った。弾道は三浦の頭上を越えてファーポスト内側を叩き、ゴールへと転がり込んだ。

 

プレス位置を高め、選手交代で圧を増す磐田

粘り強い戦いの中で絶好の時間帯にルーキーのプロ初ゴールとなる先制点をものにし、リードして折り返した後半。磐田は金子を後藤啓介に代え、後藤を頂点に、ジャーメイン良を右SHに移してスタートした。
 
しばらくの時間帯は大分がボールを握っているように見えた。その間のことを横内監督は試合後、「少しプレスの仕方に迷いがあっただろうか」と言いつつ、まったく気にかけていなかったようだった。後半に入ってプレス位置を一列ずつ上げた磐田は、まもなくその意図どおり、追撃の勢いを増していく。
 
なにより次々に投入されてくるプレーヤーが強力だ。後藤に対しては安藤や羽田が強くケアしていたのだが、60分に山田に代わってピッチに入った古川陽介は、配置された左SHで目覚ましい推進力を存分に発揮して大分を攻め立てた。2列目は右SHにドゥドゥ、トップ下にジャーメインという並び。
 
前がかりになる磐田に対し、大分も背後を突く狙い。63分には後ろでのパス交換から羽田、池田廉、松尾とつなぎ、その横パスを受けた野村のクロスに藤本が頭で合わせる形も築いた。

 

大分守備陣を後手に回らせた相手主将の同点弾

そういった狙いが先に結実して追加点を取れていれば、展開は違ったものになっていたかもしれない。だが、磐田の同点弾は早かった。64分、古川と松原の突破を防いだ流れから逆サイドに展開されたところでボールを受けたのは鈴木雄斗だ。対応した高畑をフェイントで剥がして中に持ち出すと、ドゥドゥとのワンツーで弓場も翻弄し、左足を振り抜く。ゴール前を固める大分守備陣がわずかずつ後手に回った中、最後にシュートは西川の脇の下を抜けてゴールへと転がり込んだ。
 
勢いづく磐田。66分には古川が無双し松原がエリア内から左足シュートして枠の上。さらに前がかりになる磐田に対し、それならこちらもさらにその背後を狙うという大分は70分、野村と藤本を伊佐耕平と渡邉新太に交代する。伊佐がトップに入り中川がトップ下、渡邉はそのまま左SHへ。
 
だが、伊佐や渡邉がその狙いを出そうとする以上に、流れの中で磐田の勢いが勝っていた。攻守に激しく前へと向かう磐田に対し、大分はプレー精度を欠いてしまう。79分には、復帰戦だった羽田が足の限界を訴えてデルランと交代。磐田は大分のミスパスを逃さずマイボールにすると、ひたすらゴールへと迫り続けた。

 

最後は押し込まれながら跳ね返して勝点1キープ

82分には自陣で伊佐がボールを奪い、渡邉との連係でカウンターを繰り出したが、伊佐のアーリークロスは走り込んだ中川より先に山本康裕にスライディングでクリアされた。それで得た高畑の左CKに合わせた安藤のヘディングシュートは三浦にキャッチされる。84分には古川にシュートを許し、体を張った弓場に当たった弾道が枠の上へ。
 
磐田は84分、ジャーメインと山本をベンチに下げ、ファビアン・ゴンザレスと鹿沼直生を投入して勝点3を狙いに来る。直後の磐田のCKの場面、ゴール前のポジションの取り合いで早速、ゴンザレスがデルランを倒す強度も発揮。大分も前への勢いを増そうと、87分、中川をサムエルに、弓場を保田堅心に代えた。
 
だが、最後まで形勢は磐田が優位だった。88分、古川のクロスの流れからこぼれ球に反応した鈴木のシュートは西川が掻き出し、伊佐がサムエルとカウンターを仕掛けたが、リカルド・グラッサの対応に遭ったサムエルがファウルを取られる。
 
アディショナルタイムは4分。90+1分、大分の左CKから磐田のカウンターが発動し、最後はドゥドゥのクロスにリカルド・グラッサが頭を振った。シュートはわずかに枠の右に逸れる。その後のほとんどの時間帯も押し込まれ、水際で安藤やデルランが相手の攻撃を跳ね返す展開が続いた。長いホイッスルを聞いたときには、負けなくてよかったと胸を撫で下ろすような終盤の内容だった。
 
狙いはロジカルで明確だが、それを体現するプレーや判断のクオリティーが不足していた。勝ちきれなかった磐田の監督や選手たちも肝心のところでの精度不足を嘆いていたが、大分はもっと未熟な印象だった。ここからまだまだ強豪たちとの戦いが続く中、質の向上は急務だ。