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試合レポート

緻密にデザインされたゲームを体現も力量差を覆せず0-0。無念のJ2降格確定

 

相手との力量差も見越した、ある意味で「現実的」な狙いのゲームだった。幾度かのチャンスは築き、幾度ものピンチを乗り越えて0-0。他会場の経過に追い込まれる中、勝利だけを目指したチームだがスコアレスドロー。来季J2降格が決まった。

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周到な準備の下、先発4人を入れ替え

この状況でなければこの結果は「善戦」と呼びたいほどに、チームの地力の差があらわになったゲームだった。それも想定した上でのゲームプランだったと思う。2週間の中断期間、明確なスタイルを貫く鹿島に対し、トレーニングマッチも含めた入念な準備を施して、チームはこの決戦に臨んだ。
 
前節から先発4人を入れ替えてのスタート。C大阪戦での負傷交代以来、姿が見えなかった増山朝陽が右WBで復帰。香川勇気が控えに回った左WBにはJ1初先発の野嶽惇也が立った。相手にとってデータ豊富で最近はそのストロングポイントをケアされがちな香川ではなく、J3から今夏加入したばかりの野嶽をチョイスしたのだろうか。
 
また、エンリケ・トレヴィザンがベンチに控え、3バックの中央にはペレイラが配置された。直近2試合でエンリケにクロス対応の課題が出たことも関係したかと思われたが、試合がはじまってみると増山と小出悠太が安西幸輝の空けたスペースを突いて攻める形が多く見られ、そのスライドのために左利きのエンリケよりも右利きのペレイラが選ばれたのかもしれなかった。

 

失点せずに得点を狙うギリギリのバランス

試合の4日前、難しい状況での決戦を前にした囲み取材で「失点しない守備と得点できる攻撃、どちらに重きを置いて準備するのか」という質問に、指揮官は「どちらも」と答えた。
 
「得点のためにはパワーを出さなくてはならないし、そのためにはある程度のリスクも覚悟しなくてはならない。ただ、全部が全部、バランスを崩して前がかりになってもいけないし、しっかりとリスク管理もしながらやることが大事。鹿島は特に切り替えが早く、奪った瞬間のカウンターの強さもあるチームなので、攻撃しているときこそ失点のリスクがある試合になりかねない。そこの管理はしっかりとしながら、チームとしての約束事をして、やはり得点しなくては勝点3は取れないので、そのへんのバランスは見極めながら準備して勝てるゲームをしたい」
 
現実的認識として、現在のチーム状態も含め、強豪の相手と地力の差があることは認めざるを得ない。パススピードや判断のスピード、それらの正確性、ゴール前での迫力とパワーなどから、それは否応なく見えてしまうのだ。1失点すれば2得点しなくてはならなくなり、得点力という課題を抱えるチームにとって勝点3は遠くなる。ならば失点を避けつつ好機を窺うしかない。

 

いいシーンは作るのだがあと一歩の迫力が

その準備どおり、大分は鹿島の攻撃パターンをよくスカウティングし、5-4-1のブロックを構えるとボランチで先発した小林裕紀がバランスを取りながら鹿島の攻撃を阻んだ。9分、エヴェラウドのシュートを小出が体を投げ出して防いだのをはじめ、ゴール前での対応は粘り強かった。
 
攻撃ではシャドーが相手を動かしたりコンビネーションを生み出したりしながら、サイドから攻略。それは本来このチームが目指そうとしていたスタイルだった。だが、鹿島の守備を崩すには、もっと迫力が欲しい。36分には呉屋大翔の反転シュートが枠の右。前半、シュートに至ったのはその1本だけだった。
 
41分には増山が相手に挟まれながらドリブルで中央へと切れ込み、フリーで中央に立っていた下田北斗へ落とすと下田は町田也真人へ。町田也が上がりを待って出した三竿雄斗のクロスをエリア内に進入していた野嶽がヒールでそらすと、ゴール前にいたのは三竿にボールが入った瞬間に走り出していた小林裕。残念ながらシュートは打てなかったが、可能性を感じたシーンのひとつだった。36分にもいい場面。左サイドの攻撃から、町田也とのコンビネーションで抜け出した野嶽が後ろから倒されたのだが、ファウルは取ってもらえずプレー続行となっている。

 

早めにカードを切る鹿島に辛抱強く対応

大分が今節、残留への可能性をつなげるか否かには、他会場の経過も関係してくる。1時間先駆けてはじまったユアスタの試合では、早々に湘南が仙台から先制点を奪った。続いて味スタでも徳島がFC東京に先制。さらに湘南と徳島がそれぞれ1点を加え、同時刻キックオフのアイスタでは清水が広島からゴールを挙げる。大分は前半のうちに、より苦しい状況へと追い込まれた。
 
ただ、そんな経過情報は入れずに、当初からシンプルに勝点3のみを目指していた指揮官は、その戦い方を貫く。地力の差を認めざるを得ない相手に対し、勝機を見出すにはこれしかないと言わんばかりの、周到に準備されたプランだった。
 
守備の集中を切らさない大分に対し、ACL出場権を得るためにやはり勝点3が欲しい鹿島は、早めにカードを切った。まず54分に和泉竜司と土居聖真を永戸勝也と荒木遼太郎にチェンジし、安西を一列前に上げる。さらに66分にはエヴェラウドを上田綺世へと、タイプの異なるストライカーを投入した。72分の町田浩樹から犬飼智也への交代は、呉屋と競りあった際の脳震盪疑いによるもの。
 
攻撃の手を強める鹿島に対し、大分は当初のバランスを貫きながら、守備網が破られたシーンでは高木駿がビッグセーブでしのいだ。77分にはドリブル突破からの荒木のミドルシュートを掻き出す。大分がフィニッシュまで持ち込む回数は少なく、後半は61分の渡邉新太の1本のみ。セットプレーで得たチャンスも、なかなか実らせることが出来ない。

 

81分からギアアップを狙うも…

辛抱強く相手の出方を確認しながら、片野坂知宏監督がついに動いたのは81分。疲労の見える増山と町田也をベンチに下げ、伊佐耕平とエンリケを投入。3バックの中央にエンリケを配置し、ペレイラが右CB、小出が一列上がる形を取る。伊佐はそのまま右シャドーに入った。
 
さらに87分には野嶽を香川に、小林裕を野村直輝にチェンジ。6分のアディショナルタイムに突入したところで、渡邉新太を長沢駿に交代する。
 
そうやって段階的にバランスを攻撃へと傾け、最後のパワーで1点を狙うが、実際のピッチではやはり精度や強度で差を見せつけられることになった。攻撃の形をなかなか作れず、守備色を薄めたぶん、相手に押し込まれて防戦一方。遠藤康のシュートは高木が阻み、意地でゴールは破らせずにいたが、攻撃機会も得られず1点が遠い。ついに両軍のネットは揺れず、鹿島は5位へと後退。清水が1-0で勝利したため、大分はJ2降格の痛み分けで試合は終わった。同時に横浜FCと仙台も降格が決定し、3チーム同時はJ史上初。
 
“カタノサッカー”がJ1に初めて挑んだ地でその挑戦の終わりを突きつけられ、無念さを噛みしめながらサポーターに挨拶したチームは、その日の最終便で大分に帰るために慌ただしくスタジアムを出発した。総括もしなくてはならないが、まだリーグ戦は2試合残っており、その後には天皇杯も控えている。プロの意地を見せるチャンスをものに出来るか。

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